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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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【源氏87 第六帖 末摘花7】源氏が宮家を訪ねる。化粧をした源氏は ことさら艶である。姫のかすかな衣被香の香り

【古文】

八月二十余日、

宵過ぐるまで待たるる月の心もとなきに、

星の光ばかりさやけく、松の梢吹く風の音心細くて、

いにしへの事語り出でて、うち泣きなどしたまふ。

「いとよき折かな」

と思ひて、御消息や聞こえつらむ、

例のいと忍びておはしたり。

月やうやう出でて、

荒れたる籬のほどうとましくうち眺めたまふに、

琴そそのかされて、

ほのかにかき鳴らしたまふほど、けしうはあらず。

 

「すこし、け近う今めきたる気をつけばや」

とぞ、乱れたる心には、心もとなく思ひゐたる。

人目しなき所なれば、心やすく入りたまふ。

命婦を呼ばせたまふ。

今しもおどろき顔に、

「いとかたはらいたきわざかな。

 しかしかこそ、おはしましたなれ。

 常に、かう恨みきこえたまふを、

 心にかなはぬ由をのみ、いなびきこえはべれば、

『みづからことわりも聞こえ知らせむ』

と、のたまひわたるなり。

いかが聞こえ返さむ。

なみなみのたはやすき御ふるまひならねば、

心苦しきを。

物越しにて、聞こえたまはむこと、聞こしめせ」

と言へば、いと恥づかしと思ひて、

「人にもの聞こえむやうも知らぬを」

とて、奥ざまへゐざり入りたまふさま、

いとうひうひしげなり。

 

うち笑ひて、

「いと若々しうおはしますこそ、心苦しけれ。

 限りなき人も、

 親などおはしてあつかひ後見きこえたまふほどこそ、

 若びたまふもことわりなれ、

 かばかり心細き御ありさまに、

 なほ世を尽きせず思し憚るは、つきなうこそ」

と教へきこゆ。

 

さすがに、人の言ふことは強うもいなびぬ御心にて、

「答へきこえで、ただ聞け、とあらば。

 格子など鎖してはありなむ」

とのたまふ。

 

「簀子などは便なうはべりなむ。

 おしたちて、あはあはしき御心などは、よも」

など、いとよく言ひなして、

二間の際なる障子、手づからいと強く鎖して、

御茵うち置きひきつくろふ。

いとつつましげに思したれど、

かやうの人にもの言ふらむ心ばへなども、

夢に知りたまはざりければ、命婦のかう言ふを、

あるやうこそはと思ひてものしたまふ。

乳母だつ老い人などは、曹司に入り臥して、

夕まどひしたるほどなり。

若き人、二、三人あるは、

世にめでられたまふ御ありさまを、

ゆかしきものに思ひきこえて、心げさうしあへり。

 

よろしき御衣たてまつり変へ、

つくろひきこゆれば、

正身は、何の心げさうもなくておはす。

男は、いと尽きせぬ御さまを、

うち忍び用意したまへる御けはひ、

いみじうなまめきて、

「見知らむ人にこそ見せめ、

 栄えあるまじきわたりを、あな、いとほし」

と、命婦は思へど、

ただおほどかにものしたまふをぞ、

「うしろやすう、

 さし過ぎたることは見えたてまつりたまはじ」

と思ひける。

「わが常に責められたてまつる罪さりごとに、

 心苦しき人の御もの思ひや出でこむ」

など、やすからず思ひゐたり。

君は、人の御ほどを思せば、

「されくつがへる今様のよしばみよりは、

 こよなう奥ゆかしう」

と思さるるに、いたうそそのかされて、

ゐざり寄りたまへるけはひ、忍びやかに、

衣被の香いとなつかしう薫り出でて、おほどかなるを、

「さればよ」

と思す。

年ごろ思ひわたるさまなど、

いとよくのたまひつづくれど、

まして近き御答へは絶えてなし。

「わりなのわざや」

と、うち嘆きたまふ。

 

与謝野晶子訳】

八月の二十日過ぎである。

八、九時にもまだ月が出ずに星だけが白く見える夜、

古い邸《やしき》の松風が心細くて、

父宮のことなどを言い出して、

女王は命婦といて泣いたりしていた。

源氏に訪ねて来させるのに

よいおりであると思った命婦のしらせが 行ったか、

この春のようにそっと源氏が出て来た。

その時分になって昇《のぼ》った月の光が、

古い庭をいっそう荒涼たるものに見せるのを

寂しい気持ちで女王がながめていると命婦が勧めて琴を弾かせた。

 

まずくはない、

もう少し近代的の光沢が添ったらいいだろうなどと、

ひそかなことを企てて心の落ち着かぬ命婦は思っていた。

人のあまりいない家であったから

源氏は気楽に中へはいって命婦を呼ばせた。

命婦ははじめて知って驚くというふうに見せて、

「いらっしったお客様って、それは源氏の君なんですよ。

 始終御交際をする紹介役をするようにって

 やかましく言っていらっしゃるのですが、

 そんなことは私にだめでございますって

 お断わりばかりしておりますの、

 そしたら自分で直接お話しに行くってよくおっしゃるのです。

 お帰しはできませんわね。

 ぶしつけをなさるような方なら何ですが、

 そんな方じゃございません。

 物越しでお話をしておあげになることだけを

 許してあげてくださいましね」

と言うと女王は非常に恥ずかしがって、

「私はお話のしかたも知らないのだから」

と言いながら部屋の奥のほうへ膝行《いざ》って行くのが

ういういしく見えた。

 

命婦は笑いながら、

「あまりに子供らしくいらっしゃいます。

 どんな貴婦人といいましても、

 親が十分に保護していてくださる間だけは

 子供らしくしていてよろしくても、

 こんな寂しいお暮らしをしていらっしゃりながら、

 あまりあなたのように

 羞恥《しゅうち》の観念の強いことは まちがっています」

こんな忠告をした。

 

人の言うことにそむかれない内気な性質の女王は、

「返辞をしないでただ聞いてだけいてもいいというのなら、

 格子でもおろしてここにいていい」

と言った。

 

「縁側におすわらせすることなどは失礼でございます。

 無理なことは決してなさいませんでしょう」

体裁よく言って、

次の室との間の襖子《からかみ》を命婦自身が確かに閉めて、

隣室へ源氏の座の用意をしたのである。

源氏は少し恥ずかしい気がした。

人としてはじめて逢う女には どんなことを言ってよいかを知らないが、

命婦が世話をしてくれるであろうと決めて座についた。

乳母のような役をする老女たちは 部屋へはいって

宵惑《よいまど》の目を閉じているころである。

若い二、三人の女房は有名な源氏の君の来訪に心をときめかせていた。

 

よい服に着かえさせられながら女王自身は

何の心の動揺もなさそうであった。

男はもとよりの美貌を目だたぬように化粧して、

今夜はことさら艶《えん》に見えた。

美の価値のわかる人などのいない所だのにと

命婦は気の毒に思った。

命婦には女王がただおおようにしているに相違ない点だけが

安心だと思われた。

会話に出過ぎた失策をしそうには見えないからである。

自分の責めのがれにしたことで、

気の毒な女王を

いっそう不幸にしないだろうかという不安はもっていた。

源氏は相手の身柄を尊敬している心から

利巧《りこう》ぶりを見せる洒落気《しゃれぎ》の多い女よりも、

気の抜けたほどおおようなこんな人のほうが 感じがよいと思っていたが、

襖子の向こうで、女房たちに勧められて少し座を進めた時に、

かすかな衣被香《えびこう》のにおいがしたので、

自分の想像はまちがっていなかったと思い、

長い間思い続けた恋であったことなどを上手に話しても、

手紙の返事をしない人からはまた口ずからの返辞を

受け取ることができなかった。

「どうすればいいのです」

と源氏は歎息《たんそく》した。

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【源氏 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

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【源氏物語86 第六帖 末摘花6】源氏は常陸宮の女王に手紙を送るが返事はない。訪ねる者のいない草深い女王の屋敷に出入りする者はなかった。

【古文】

秋のころほひ、静かに思しつづけて、

かの砧の音も耳につきて聞きにくかりしさへ、

恋しう思し出でらるるままに、

常陸宮にはしばしば聞こえたまへど、

なほおぼつかなうのみあれば、世づかず、

心やましう、負けては止まじの御心さへ添ひて、

命婦を責めたまふ。

 

「いかなるやうぞ。いとかかる事こそ、まだ知らね」

と、いとものしと思ひてのたまへば、いとほしと思ひて、

「もて離れて、似げなき御事とも、

 おもむけはべらず。

 ただ、おほかたの御ものづつみのわりなきに、

 手をえさし出でたまはぬとなむ見たまふる」

と聞こゆれば、

「それこそは世づかぬ事なれ。

 物思ひ知るまじきほど、

 独り身をえ心にまかせぬほどこそ、ことわりなれ、

 何事も思ひしづまりたまへらむ、と思ふこそ。

 そこはかとなく、つれづれに心細うのみおぼゆるを、

 同じ心に答へたまはむは、願ひかなふ心地なむすべき。

 何やかやと、世づける筋ならで、

 その荒れたる簀子にたたずままほしきなり。

 いとうたて心得ぬ心地するを、かの御許しなくとも、

 たばかれかし。

 心苛られし、うたてあるもてなしには、よもあらじ」

 など、語らひたまふ。

 

なほ世にある人のありさまを、

おほかたなるやうにて聞き集め、

耳とどめたまふ癖のつきたまへるを、

さうざうしき宵居など、はかなきついでに、

さる人こそとばかり聞こえ出でたりしに、

かくわざとがましうのたまひわたれば、

「なまわづらはしく、女君の御ありさまも、

 世づかはしく、よしめきなどもあらぬを、

 なかなかなる導きに、いとほしき事や見えむなむ」

と思ひけれど、君のかうまめやかにのたまふに、

「聞き入れざらむも、ひがひがしかるべし。

 父親王おはしける折にだに、旧りにたるあたりとて、

 おとなひきこゆる人もなかりけるを、

 まして、今は浅茅分くる人も跡絶えたるに」。

かく世にめづらしき御けはひの、

漏りにほひくるをば、

なま女ばらなども笑み曲げて、

「なほ聞こえたまへ」

と、そそのかしたてまつれど、

あさましうものづつみしたまふ心にて、

ひたぶるに見も入れたまはぬなりけり。

 

命婦は、

「さらば、さりぬべからむ折に、

物越しに聞こえたまはむほど、御心につかずは、

さても止みねかし。

また、さるべきにて、仮にもおはし通はむを、

とがめたまふべき人なし」

など、あだめきたるはやり心はうち思ひて、

父君にも、かかる事なども言はざりけり。

 

与謝野晶子訳】

秋になって、

夕顔の五条の家で聞いた砧《きぬた》の

耳についてうるさかったことさえ

恋しく源氏に思い出されるころ、

源氏はしばしば常陸の宮の女王へ手紙を送った。

返事のないことは秋の今も初めに変わらなかった。

あまりに人並みはずれな態度をとる女だと思うと、

負けたくないというような意地も出て、

命婦へ積極的に取り持ちを迫ることが多くなった。

 

「どんなふうに思っているのだろう。

 私はまだこんな態度を取り続ける女に出逢ったことはないよ」

不快そうに源氏の言うのを聞いて命婦も気の毒がった。

「私は格別この御縁はよろしくございませんとも言っておりませんよ。

 ただあまり内気過ぎる方で 男の方との交渉に手が出ないのでしょうと、

 お返事の来ないことを私はそう解釈しております」

「それがまちがっているじゃないか。

 とても年が若いとか、

 また親がいて自分の意志では何もできないというような人たちこそ、

 それがもっともだとは言えるが、

 あんな一人ぼっちの心細い生活をしている人というものは、

 異性の友だちを作って、

 それから優しい慰めを言われたり、

 自分のことも人に聞かせたりするのがよいことだと思うがね。

 私はもう面倒な結婚なんかどうでもいい。

 あの古い家を訪問して、

 気の毒なような荒れた縁側へ

 上がって話すだけのことをさせてほしいよ。

 あの人がよいと言わなくても、 

 ともかくも私をあの人に接近させるようにしてくれないか。

 気短になって取り返しのならないような行為に

 出るようなことは 断じてないだろう」

などと源氏は言うのであった。

 

女の噂《うわさ》を関心も持たないように聞いていながら、

その中のある者に特別な興味を持つような癖が源氏にできたころ、

源氏の宿直所《とのいどころ》のつれづれな夜話に、

命婦が何の気なしに語った常陸の宮の女王のことを

始終こんなふうに責任のあるもののように言われるのを

命婦は迷惑に思っていた。

女王の様子を思ってみると、

それが似つかわしいこととは仮にも思えないのであったから、

よけいな媒介役を勤めて、

結局女王を不幸にしてしまうのではないかとも思えたが、

源氏がきわめてまじめに言い出していることであったから、

同意のできない理由もまたない気がした。

常陸の太守の宮が御在世中でも

古い御代《みよ》の残りの宮様として世間は扱って、

御生活も豊かでなかった。

お訪ねする人などは その時代から皆無といってよい状態だったのだから、

今になってはまして草深い女王の邸へ 出入りしようとする者はなかった。

その家へ光源氏の手紙が来たのであるから、

女房らは一陽来復の夢を作って、女王に返事を書くことも勧めたが、

世間のあらゆる内気の人の中の最も引っ込み思案の女王は、

手紙に語られる源氏の心に触れてみる気も何もなかったのである。

 

命婦はそんなに源氏の望むことなら、

自分が手引きして物越しにお逢わせしよう、

お気に入らなければそれきりにすればいいし、

また縁があって情人関係になっても、

それを干渉して止める人は宮家にないわけであるなどと、

命婦自身が恋愛を軽いものとして考えつけている若い心に思って、

女王の兄にあたる自身の父にも話しておこうとはしなかった。

 

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源氏物語 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

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【源氏85 第六帖 末摘花5】頭中将はちゃっかり常陸宮の姫に手紙を送る。源氏は中将をじらすが自分も返事が来ていないのは同じ

【古文】

「しかしかの返り事は見たまふや。

 試みにかすめたりしこそ、はしたなくて止みにしか」

と、憂ふれば、

「さればよ、言ひ寄りにけるをや」

と、ほほ笑まれて、

「いさ、見むとしも思はねばにや、見るとしもなし」

と、答へたまふを、

「人わきしける」

と思ふに、いとねたし。

君は、深うしも思はぬことの、かう情けなきを、

すさまじく思ひなりたまひにしかど、

かうこの中将の言ひありきけるを、

「言多く言ひなれたらむ方にぞ靡かむかし。

 したり顔にて、

 もとのことを思ひ放ちたらむけしきこそ、

 憂はしかるべけれ」

と思して、命婦をまめやかに語らひたまふ。

「おぼつかなく、もて離れたる御けしきなむ、

 いと心憂き。

 好き好きしき方に疑ひ寄せたまふにこそあらめ。

 さりとも、短き心ばへつかはぬものを。

 人の心ののどやかなることなくて、

 思はずにのみあるになむ、

 おのづからわがあやまちにもなりぬべき。

 心のどかにて、

 親はらからのもてあつかひ恨むるもなう、

 心やすからむ人は、なかなかなむらうたかるべきを」

とのたまへば、

「いでや、さやうにをかしき方の御笠宿りには、

 えしもやと、

 つきなげにこそ見えはべれ。

 ひとへにものづつみし、ひき入りたる方はしも、

 ありがたうものしたまふ人になむ」

と、見るありさま語りきこゆ。

「らうらうじう、かどめきたる心はなきなめり。

 いと子めかしうおほどかならむこそ、

 らうたくはあるべけれ」

と思し忘れず、のたまふ。

瘧病みにわづらひたまひ、

人知れぬもの思ひの紛れも、

御心のいとまなきやうにて、春夏過ぎぬ。

 

与謝野晶子訳】

常陸の宮の返事が来ますか?

 私もちょっとした手紙をやったのだけれど何にも言って来ない。

 侮辱された形ですね」

自分の想像したとおりだ、

頭中将はもう手紙を送っているのだと思うと

源氏はおかしかった。

「返事を格別見たいと思わない女だからですか、

 来たか来なかったかよく覚えていませんよ」

源氏は中将をじらす気なのである。

返事の来ないことは同じなのである。

中将は、そこへ行きこちらへは来ないのだと口惜しがった。

源氏はたいした執心を持つのでない女の 冷淡な態度に

厭気《いやき》がして捨てて置く気になっていたが、

頭中将の話を聞いてからは、

口上手な中将のほうに女は取られてしまうであろう、

女はそれで好《い》い気になって、

初めの求婚者のことなどは、

それは よしてしまったと

冷ややかに自分を見くびるであろうと思うと、

あるもどかしさを覚えたのである。

それから大輔《たゆう》命婦《みょうぶ》に

まじめに仲介を頼んだ。

「いくら手紙をやっても冷淡なんだ。

 私がただ一時的な浮気で、

 そうしたことを言っているのだと解釈しているのだね。

 私は女に対して薄情なことのできる男じゃない。

 いつも相手のほうが気短に私からそむいて行くことから

 悪い結果にもなって、

 結局私が捨ててしまったように言われるのだよ。

 孤独の人で、

 親や兄弟が夫婦の中を干渉するようなうるさいこともない、

 気楽な妻が得られたら、

 私は十分に愛してやることができるのだ」

「いいえ、そんな、

 あなた様が十分にお愛しになるようなお相手に

 あの方はなられそうもない気がします。

 非常に内気で、

 おとなしい点はちょっと珍らしいほどの方ですが」

命婦は自分の知っているだけのことを源氏に話した。

「貴婦人らしい聡明さなどが見られないのだろう、

 いいのだよ、無邪気でおっとりとしていれば私は好きだ」

命婦に逢《あ》えばいつもこんなふうに源氏は言っていた。

その後源氏は瘧病《わらわやみ》になったり、

病気がなおると少年時代からの苦しい恋の悩みに

世の中に忘れてしまうほどに物思いをしたりして、

この年の春と夏とが過ぎてしまった。

【源氏81 第六帖 末摘花1】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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