2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧
【古文】 八月二十余日、 宵過ぐるまで待たるる月の心もとなきに、 星の光ばかりさやけく、松の梢吹く風の音心細くて、 いにしへの事語り出でて、うち泣きなどしたまふ。 「いとよき折かな」 と思ひて、御消息や聞こえつらむ、 例のいと忍びておはしたり。 …
【古文】 秋のころほひ、静かに思しつづけて、 かの砧の音も耳につきて聞きにくかりしさへ、 恋しう思し出でらるるままに、 常陸宮にはしばしば聞こえたまへど、 なほおぼつかなうのみあれば、世づかず、 心やましう、負けては止まじの御心さへ添ひて、 命婦…
【古文】 「しかしかの返り事は見たまふや。 試みにかすめたりしこそ、はしたなくて止みにしか」 と、憂ふれば、 「さればよ、言ひ寄りにけるをや」 と、ほほ笑まれて、 「いさ、見むとしも思はねばにや、見るとしもなし」 と、答へたまふを、 「人わきしけ…
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【源氏物語84 第六帖 末摘花4】 〈古文〉 おのおの契れる方にも、あまえて、 え行き別れたまはず、一つ車に乗りて、 月のをかしきほどに雲隠れたる道のほど、 笛吹き合せて大殿におはしぬ。 前駆なども追はせたまはず、忍び入りて、 人見ぬ廊に御直衣ども召…
【源氏物語 83 第六帖 末摘花3】 〈古文〉 「主上の、まめにおはしますと、 もてなやみきこえさせたまふこそ、 をかしう思うたまへらるる折々はべれ。 かやうの御やつれ姿を、いかでかは御覧じつけむ」 と聞こゆれば、たち返り、うち笑ひて、 「異人の言はむ…