2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧
大納言公任(55番) 千載集 雑上・1035 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ 〜滝の流れる水音は、聞こえなくなってから もうずいぶんになるけれども、 その名声だけは、今なお聞こえていることだよ。 大納言公任 だいなごんきん…
儀同三司母(54番)新古今集 恋・1149 忘れじの 行末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな 〜いつまでも忘れまいとすることは、 遠い将来まではとても難しいものです。 いっそのこと、 今日をかぎりに 命が尽きてしまえばいいのに。 儀同三司母 ぎどう…
右大将道綱母(53番) 拾遺集 恋四・912 嘆きつつ 独り寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る 〜会いに来てくれない貴方のことを 嘆きながら、一人で過ごす夜明けまでの時間が どれだけ長いものか、あなたはご存知ですか? 右大将道綱母 うだいし…
藤原道信(52番) 後拾遺集 恋二・672 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき あさぼらけかな 〜夜が明けてしまうと、 また日が暮れて夜になる。 いずれ再び会えるとは分かっているのです。 それでもなお恨めしい夜明けです。 藤原道信 ふじわ…
藤原実方(51番) 後拾遺集 恋一・612 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを 〜こんなに恋い慕っているということだけでも あなたに伝えたいのですが、伝えられない。 あなたは知らないでしょう。 伊吹山のさしも草のように 燃え…
藤原義孝(50番) 後拾遺集 恋二・669 君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな 〜貴方に逢う為ならば 惜しくないと思っていたこの命までも、 お逢いできた今となっては 長くあって欲しいと思うようになりました。 藤原義孝 ふじわらの…
大中臣能宣(49番)詞花集 恋上・225 〜みかきもり 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ 物をこそ思へ 禁中の御垣を守る衛士のかがり火は、 夜は赤々と燃えているが、昼間は消える。 まるで、(夜は情熱に燃え、昼間は思い悩んでいる) わたしの恋の苦しみの…
源重之(48番)詞花集 恋上・211 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみくだけて物を 思ふころかな 〜風がとても強いので、岩に打ちつける波に 自分ばかりが砕け散ってしまうように、 (あなたがとてもつれないので) わたしの心は (恋に悩み) 砕け散るばかりのこ…
恵慶法師(47番)拾遺集 秋・140 八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり 〜つる草が何重にも重なって 生い茂っている荒れ寂れた家。 訪れる人は誰もいないが、 それでも秋はやってくるのだなあ。 恵慶法師 えぎょうほうし (生没…
曽禰好忠(46番)新古今集 恋・1071 由良の戸を わたる舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋のみちかな 〜由良川の(流れが速い)河口の瀬戸を渡る船頭が、 楫(かじ)をなくして、 行く先も決まらぬまま漂っているように わたしの恋のなりゆきも どのようにな…
謙徳公(45番)拾遺集 恋五・950 哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな 〜私を哀れだと同情を向けてくれそうな人も 今はいるようには思えません。 (このままあなたを恋しながら) 自分の身がむなしく消えていく日を、 どうすること…
中納言朝忠(44番)拾遺集 恋一・678 逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし 〜もし逢うことが絶対にないのならば、 あの人のつれなさも、 我が身の辛い運命も 恨むことはしないだろうに。 藤原朝忠 ふじわらのあさただ(910~9…
藤原敦忠(権中納言敦忠)(43番)拾遺集 恋二・710 逢ひ見ての 後の心に くらぶれば昔は物を 思はざりけり 〜貴方に逢ってからの 今の苦しい恋心にくらべると、 逢いたいと思っていた 昔の恋心の苦しみなどは、 何も物思いなどしなかったも 同じようなもの…
清原元輔(42番)後拾遺集 恋四・770 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは 〜かたく約束を交わしましたね。 互いに涙で濡れた袖をしぼりながら。 波が あの末の松山を 決して越すことがないように、 わたし達二人の愛も 決して変わりは…
壬生忠見(41番) 拾遺集 恋一・621 恋すてふ(ちょう)わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか 〜「恋をしている」という私の噂が もう立ってしまった。 誰にも知られないように、 心ひそかに思いはじめたばかりなのに。 壬生忠見 みぶのた…
平兼盛(40番) 拾遺集恋一・622 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は物や思ふと 人の問ふまで 〜人に知られまいと恋しい思いを隠していたのに、 とうとう隠し切れずに顔色に出てしまった。 何か物思いをしているのではと、 人が尋ねるほどまでに…。 平 兼盛 …
参議等(39番) 後撰集 恋・578 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれどあまりてなどか 人の恋しき 〜浅茅の生えた寂しく忍ぶ 小野の篠原ではないけれど、 人に隠して忍んでいても、 想いがあふれてこぼれそうになる。 どうしてあの人のことが恋しいのだろう。 参…
右近(38番)拾遺集 恋四・870 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな 〜貴方に忘れられる我が身のことは 何ほどのこともありません。 ただ神にかけて 誓ったあなたの命が、 はたして神罰を受けはしないかと、 借しく思われてなりません…
凡河内躬恒(29番)古今集 秋 下・277 ❄️ 心当てに 折らばや折らむ初霜の おきまどはせる 白菊の花 〜無造作に折ろうとすれば、 果たして折れるだろうか。 一面に降りた初霜の白さに、 いずれが霜か白菊の花か 見分けもつかないほどなのに。 凡河内躬恒 (お…
文屋朝康(37番)後撰集 秋・308 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける 〜(草葉の上に落ちた) 白露に 風がしきりに吹きつけている秋の野。 まるで糸に通してとめてない玉が、 美しく散り乱れているようだったよ。 文屋朝康 ふんやのあさ…
清原深養父(36番)古今集 夏・166 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを雲のいづこに 月宿るらむ 〜夏の夜は(とても短いので) まだ宵のうちだと思っているのに明けてしまった。 いったい月は、 雲のどの辺りに宿をとっているのだろうか。 清原深養父 きよはら…
【藤原興風】(34番)古今集 雑上・909 誰をかも 知る人にせむ 高砂の松も昔の 友ならなくに 〜年老いた私は いったい誰を友にすれば良いのだろうか。 馴染みあるこの高砂の松でさえ、 昔からの友ではないのだから。 藤原 興風 ふじわらのおきかぜ (生没年…
紀友則(33番)古今集 春下・84 ひさかたの 光のどけき 春の日にしづ心なく 花の散るらむ 〜日の光が、 のどかでやわらかく降り注ぐ春の日に、 桜の花は どうして こんなにも落ち着いた心もなく 散っていってしまうのでしょう。 紀友則 きのとものり (851…
春道列樹(32番)古今集 秋下・303 山川に 風のかけたる しがらみは流れもあへぬ 紅葉なりけり 〜山あいの谷川に、 風が架け渡したなんとも美しい柵があった。 よく見ると 流れることができないでたまっている紅葉の葉であったのだなあ。 春道 列樹 はるみ…
坂上是則(31番)❄️古今集 冬・332 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪❄️ 〜夜が明ける頃あたりを見てみると、 まるで有明の月が照らしているのかと 思うほどに、 吉野の里には 白雪が降り積もっているではないか。 坂上 是則 さかのうえ…
壬生忠岑 みぶのただみね(30番)古今集 恋・625 有明の つれなく見えし 別れより あかつきばかり うきものはなし 〜あなたと別れたあの時も、 有明の月が残っていました。 あなたと別れてから、 有明の月がかかる夜明けほど つらいものはありません。 壬生…
凡河内躬恒(29番)古今集 秋 下・277 ❄️ 心当てに 折らばや折らむ初霜の おきまどはせる 白菊の花 〜無造作に折ろうとすれば、 果たして折れるだろうか。 一面に降りた初霜の白さに、 いずれが霜か白菊の花か 見分けもつかないほどなのに。 凡河内躬恒 (お…
源宗于朝臣(28番)『古今集』冬・315 山里は 冬ぞさびしさ まさりける人目も草も かれぬと思へば❄️ 〜山里はいつの季節でも寂しい。 冬はとりわけ寂しく感じられる。 尋ねてくれる人も途絶え、 慰めの草も枯れてしまうのだと思うと。 源 宗于(みなもとのむ…