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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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【源氏物語 83 第六帖 末摘花3】帝は源氏が真面目すぎて困ると仰る。庭に出たら、源氏を変装してまで 尾行してきた頭中将に遭遇。

源氏物語 83 第六帖 末摘花3】

〈古文〉

主上の、まめにおはしますと、

 もてなやみきこえさせたまふこそ、

 をかしう思うたまへらるる折々はべれ。

 かやうの御やつれ姿を、いかでかは御覧じつけむ」

と聞こゆれば、たち返り、うち笑ひて、

 

「異人の言はむやうに、咎なあらはされそ。

 これをあだあだしきふるまひと言はば、

 女のありさま苦しからむ」

とのたまへば、

「あまり色めいたりと思して、折々かうのたまふを、恥づかし」

と思ひて、ものも言はず。

 

寝殿の方に、人のけはひ聞くやうもやと思して、

やをら立ち退きたまふ。

透垣のただすこし折れ残りたる隠れの方に、

立ち寄りたまふに、もとより立てる男ありけり。

 

「誰れならむ。心かけたる好き者ありけり」

と思して、蔭につきて立ち隠れたまへば、頭中将なりけり。

 

この夕つ方、内裏よりもろともにまかでたまひける、

やがて大殿にも寄らず、二条院にもあらで、

引き別れたまひけるを、いづちならむと、ただならで、

我も行く方あれど、後につきてうかがひけり。

 

あやしき馬に、狩衣姿のないがしろにて来ければ、

え知りたまはぬに、

さすがに、かう異方に入りたまひぬれば、

心も得ず思ひけるほどに、

ものの音に聞きついて立てるに、

帰りや出でたまふと、下待つなりけり。

 

君は、誰ともえ見分きたまはで、

我と知られじと、抜き足に歩みたまふに、

ふと寄りて、

 

「ふり捨てさせたまへるつらさに、

 御送り仕うまつりつるは。

 もろともに大内山は出でつれど

 入る方見せぬいさよひの月

と恨むるもねたけれど、

この君と見たまふ、

すこしをかしうなりぬ。

 

「人の思ひよらぬことよ」と憎む憎む、

 「里わかぬ かげをば見れど ゆく月の

 いるさの山を 誰れか尋ぬる」

 「かう慕ひありかば、いかにせさせたまはむ」

と聞こえたまふ。

 

「まことは、かやうの御歩きには、

 随身からこそはかばかしきこともあるべけれ。

 後らさせたまはでこそあらめ。

 やつれたる御歩きは、軽々しき事も出で来なむ」

と、おし返しいさめたてまつる。

 

かうのみ見つけらるるを、ねたしと思せど、

かの撫子はえ尋ね知らぬを、

重き功に、御心のうちに思し出づ。

 

〈現代文〉

「あまりにまじめ過ぎるからと

 陛下がよく困るようにおっしゃっていらっしゃいますのが、

 私にはおかしくてならないことがおりおりございます。

 こんな浮気なお忍び姿を陛下は御覧になりませんからね」

命婦が言うと、

源氏は二足三足帰って来て、笑いながら言う。

 

「何を言うのだね。品行方正な人間でも言うように。

 これを浮気と言ったら、君の恋愛生活は何なのだ」

多情な女だと源氏が決めていて、

おりおりこんなことを面と向かって言われるのを

命婦は恥ずかしく思って何とも言わなかった。

 

女暮らしの家の座敷の物音を聞きたいように思って

源氏は静かに庭へ出たのである。

大部分は朽ちてしまったあとの少し残った透垣《すいがき》の

からだが隠せるほどの蔭《かげ》へ源氏が寄って行くと、

そこに以前から立っていた男がある。

 

だれであろう女王に恋をする好色男があるのだと思って、

暗いほうへ隠れて立っていた 。

初めから庭にいたのは頭中将《とうのちゅうじょう》なのである。

 

今日も夕方御所を同時に退出しながら、

源氏が左大臣家へも行かず、二条の院へも帰らないで、

妙に途中で別れて行ったのを見た中将が、不審を起こして、

自身のほうにも行く家があったのを行かずに、

源氏のあとについて来たのである。

 

わざと貧弱な馬に乗って狩衣《かりぎぬ》姿をしていた中将に

源氏は気づかなかったのであったが、

こんな思いがけない邸《やしき》へはいったのが

また中将の不審を倍にして、

立ち去ることができなかったころに、

琴を弾く音《ね》がしてきたので、

それに心も惹かれて庭に立ちながら、

一方では源氏の出て来るのを待っていた。

 

源氏はまだだれであるかに気がつかないで、

顔を見られまいとして抜き足をして庭を離れようとする時に

その男が近づいて来て言った。

 

「私をお撒《ま》きになったのが恨めしくて、

こうしてお送りしてきたのですよ。

『もろともに 大内山は出《い》でつれど

 入る方見せ ぬいざよひの月』

さも秘密を見現わしたように得意になって言うのが腹だたしかったが、

源氏は頭中将であったことに安心もされ、

おかしくなりもした。

「そんな失敬なことをする者はあなたのほかにありませんよ」

憎らしがりながらまた言った。

『里分かぬ かげを見れども 行く月の

 いるさの山を 誰《たれ》かたづぬる』

 こんなふうに私が始終あなたについて歩いたら

 お困りになるでしょう あなたはね」

 

「しかし、恋の成功は

 よい随身をつれて行くか行かないかで決まることもあるでしょう。

 これからはごいっしょにおつれください。お一人歩きは危険ですよ」

頭中将はこんなことを言った。

 

頭中将に得意がられていることを源氏は残念にも思ったが、

あの撫子《なでしこ》の女が自身のものになったことを

中将が知らないことだけが内心には誇らしかった。

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【源氏81 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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