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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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【源氏81 第六帖 末摘花1】源氏は夕顔の女君を失った悲しみを忘れることができない。源氏は縁のあった女を忘れない。乳母子の大輔の命婦から 気の毒な常陸宮の姫君のことを聞く。

【古文】

思へどもなほ飽かざりし夕顔の露に後れし心地を、

年月経れど、思し忘れず、

ここもかしこも、うちとけぬ限りの、

気色ばみ心深きかたの御いどましさに、

け近くうちとけたりしあはれに、

似るものなう恋しく思ほえたまふ。

 

いかで、ことことしきおぼえはなく、

いとらうたげならむ人の、

つつましきことなからむ、見つけてしがなと、

こりずまに思しわたれば、

すこしゆゑづきて聞こゆるわたりは、

御耳とどめたまはぬ隈なきに、

さてもやと、

思し寄るばかりのけはひあるあたりにこそ、

一行をもほのめかしたまふめるに、

なびききこえずもて離れたるは、

をさをさあるまじきぞ、いと目馴れたるや。

つれなう心強きは、

たとしへなう情けおくるるまめやかさなど、

あまりもののほど知らぬやうに、

さてしも過ぐしはてず、名残なくくづほれて、

なほなほしき方に定まりなどするもあれば、

のたまひさしつるも多かりける。

 

かの空蝉を、ものの折々には、

ねたう思し出づ。

荻の葉も、さりぬべき風のたよりある時は、

おどろかしたまふ折もあるべし。

火影の乱れたりしさまは、

またさやうにても見まほしく思す。

 

おほかた、名残なきもの忘れをぞ、

えしたまはざりける。

左衛門の乳母とて、

大弐のさしつぎに思いたるが女、

大輔の命婦とて、内裏にさぶらふ、

わかむどほりの兵部大輔なる女なりけり。

いといたう色好める若人にてありけるを、

君も召し使ひなどしたまふ。

母は筑前守の妻にて、下りにければ、

父君のもとを里にて行き通ふ。

 

常陸親王の、

末にまうけていみじうかなしうかしづきたまひし御女、

心細くて残りゐたるを、

もののついでに語りきこえければ、

あはれのことやとて、

御心とどめて問ひ聞きたまふ。

 

「心ばへ容貌など、

 深き方はえ知りはべらず。

 かいひそめ、人疎うもてなしたまへば、

 さべき宵など、物越しにてぞ、語らひはべる。

 琴をぞなつかしき語らひ人と思へる」

と聞こゆれば、

 

「三つの友にて、今一種やうたてあらむ」とて、

「我に聞かせよ。父親王の、

 さやうの方にいとよしづきてものしたまうければ、

 おしなべての手にはあらじ、となむ思ふ」

とのたまへば、

 

「さやうに聞こし召すばかりにはあらずやはべらむ」

と言へど、御心とまるばかり聞こえなすを、

「いたうけしきばましや。

 このころのおぼろ月夜に忍びてものせむ。まかでよ」

とのたまへば、わづらはしと思へど、

内裏わたりものどやかなる春のつれづれにまかでぬ。

父の大輔の君は他にぞ住みける。

ここには時々ぞ通ひける。

命婦は、継母のあたりは住みもつかず、

姫君の御あたりをむつびて、

ここには来るなりけり。

 

【現代文】

源氏の君の夕顔を失った悲しみは、

月がたち年が変わっても忘れることができなかった。

左大臣家にいる夫人も、

六条の貴女《きじょ》も強い思い上がりと

源氏の他の愛人を

寛大に許すことのできない気むずかしさがあって、

扱いにくいことによっても、

源氏はあの気楽な自由な気持ちを与えてくれた恋人ばかりが

追慕されるのである。

 

どうかしてたいそうな身分のない女で、

可憐《かれん》で、

そして世間的にあまり恥ずかしくもないような恋人を見つけたいと

懲りもせずに思っている。

少しよいらしく言われる女にはすぐに源氏の好奇心は向く。

さて接近して行こうと思うのにはまず短い手紙などを送るが、

もうそれだけで女のほうからは好意を表してくる。

冷淡な態度を取りうる者はあまりなさそうなのに

源氏はかえって失望を覚えた。

ある場合条件どおりなのがあっても、

それは頭に欠陥のあるのとか、

理智《りち》一方の女であって、

源氏に対して一度は思い上がった態度に出ても、

あまりにわが身知らずのようであるとか思い返しては

つまらぬ男と結婚をしてしまったりするのもあったりして、

話をかけたままになっている向きも多かった。

 

空蝉《うつせみ》が何かのおりおりに思い出されて

敬服するに似た気持ちもおこるのであった。

軒端《のきば》の荻《おぎ》へは 今も時々手紙が送られることと思われる。

灯影《ほかげ》に見た顔のきれいであったことを思い出しては

情人としておいてよい気が源氏にするのである。

 

源氏の君は一度でも関係を作った女を

忘れて捨ててしまうようなことはなかった。

左衛門《さえもん》の乳母《めのと》といって、

源氏からは大弐《だいに》の乳母の次にいたわられていた女の、

一人娘は大輔《たゆう》命婦《みょうぶ》といって 御所勤めをしていた。

王氏の兵部《ひょうぶ》大輔である人が父であった。

多情な若い女であったが、

源氏も宮中の宿直所《とのいどころ》では 女房のようにして使っていた。

左衛門の乳母は今は筑前《ちくぜんのかみ》と結婚していて、

九州へ行ってしまったので、

父である兵部大輔の家を実家として女官を勤めているのである。

 

常陸の太守であった親王(兵部大輔はその息《そく》である)が

年をおとりになってからお持ちになった姫君が

孤児になって残っていることを何かのついでに命婦が源氏へ話した。

気の毒な気がして源氏は詳しくその人のことを尋ねた。

 

「どんな性質でいらっしゃるとか御容貌《ごきりょう》のこととか、

 私はよく知らないのでございます。

 内気なおとなしい方ですから、

 時々は几帳《きちょう》越しくらいのことでお話をいたします。

 琴《きん》がいちばんお友だちらしゅうございます」

 

「それはいいことだよ。琴と詩と酒を三つの友というのだよ。

 酒だけはお嬢さんの友だちにはいけないがね」

こんな冗談を源氏は言ったあとで、

「私にその女王さんの琴の音《ね》を聞かせないか。

 常陸の宮さんは、そうした音楽などのよくできた方らしいから、

 平凡な芸ではなかろうと思われる」

と言った。

 

「そんなふうに思召して お聞きになります価値がございますか、どうか」

「思わせぶりをしないでもいいじゃないか。

 このごろは朧月《おぼろづき》があるからね、そっと行ってみよう。

 君も家《うち》へ退《さが》っていてくれ」

源氏が熱心に言うので、

大輔の命婦は迷惑になりそうなのを恐れながら、

御所も御用のひまな時であったから、

春の日永《ひなが》に退出をした。

父の大輔は宮邸には住んでいないのである。

その継母の家へ出入りすることをきらって、

命婦は祖父の宮家へ帰るのである。

 

【源氏81 第六帖 末摘花1】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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