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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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【源氏80 第五帖若紫23 完】若紫(女王)が行方不明になり父宮は悲しむ。すっかり馴染んだ若紫は 源氏が帰ってくる時は誰より先に出迎えいろいろ話をする。

【古文】

「書きそこなひつ」

と恥ぢて隠したまふを、

せめて見たまへば、

「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかな

 いかなる草のゆかりなるらむ」

と、いと若けれど、生ひ先見えて、

ふくよかに書いたまへり。

故尼君のにぞ似たりける。

「今めかしき手本習はば、いとよう書いたまひてむ」

と見たまふ。

雛など、わざと屋ども作り続けて、

もろともに遊びつつ、

こよなきもの思ひの紛らはしなり。

 

かのとまりにし人びと、宮渡りたまひて、

尋ねきこえたまひけるに、

聞こえやる方なくてぞ、

わびあへりける。

「しばし、人に知らせじ」

と君ものたまひ、

少納言も思ふことなれば、

せちに口固めやりたり。

ただ、

「行方も知らず、少納言が率て隠しきこえたる」

とのみ聞こえさするに、

宮も言ふかひなう思して、

「故尼君も、かしこに渡りたまはむことを、

 いとものしと思したりしことなれば、

 乳母の、いとさし過ぐしたる心ばせのあまり、

 おいらかに渡さむを、便なし、

 などは言はで、心にまかせ、

率てはふらかしつるなめり」

と、泣く泣く帰りたまひぬ。

 

「もし、聞き出でたてまつらば、告げよ」

とのたまふも、わづらはしく。

僧都の御もとにも、尋ねきこえたまへど、

あとはかなくて、

あたらしかりし御容貌など、

恋しく悲しと思す。

北の方も、

母君を憎しと思ひきこえたまひける心も失せて、

わが心にまかせつべう思しけるに違ひぬるは、

口惜しう思しけり。

 

やうやう人参り集りぬ。

御遊びがたきの童女、児ども、

いとめづらかに今めかしき御ありさまどもなれば、

思ふことなくて遊びあへり。

君は、男君のおはせずなどして、

さうざうしき夕暮などばかりぞ、

尼君を恋ひきこえたまひて、

うち泣きなどしたまへど、

宮をばことに思ひ出できこえたまはず。

もとより見ならひきこえたまはでならひたまへれば、

今はただこの後の親を、

いみじう睦びまつはしきこえたまふ。

 

ものよりおはすれば、まづ出でむかひて、

あはれにうち語らひ、御懐に入りゐて、

いささか疎く恥づかしとも思ひたらず。

さるかたに、いみじうらうたきわざなりけり。

 さかしら心あり、

何くれとむつかしき筋になりぬれば、

わが心地もすこし違ふふしも出で来やと、

心おかれ、人も恨みがちに、思ひのほかのこと、

おのづから出で来るを、

いとをかしきもてあそびなり。

女などはた、かばかりになれば、

心やすくうちふるまひ、

隔てなきさまに臥し起きなどは、

えしもすまじきを、

これは、

いとさまかはりたるかしづきぐさなりと、

思ほいためり。
 

【🪻現代文】

「書きそこねたわ」 と言って、

恥ずかしがって隠すのをしいて読んでみた。

『かこつべき 故を知らねば おぼつかな

 いかなる草の ゆかりなるらん』  

子供らしい字ではあるが、将来の上達が予想されるような、

ふっくりとしたものだった。

死んだ尼君の字にも似ていた。

現代の手本を習わせたならもっとよくなるだろうと源氏は思った。

雛《ひな》なども屋根のある家などもたくさんに作らせて、

若紫の女王と遊ぶことは

源氏の物思いを紛らすのに最もよい方法のようだった。

 

大納言家に残っていた女房たちは、

宮がおいでになった時に 御挨拶のしようがなくて困った。

当分は世間へ知らせずにおこうと、源氏も言っていたし、

少納言もそれと同感なのであるから、

秘密にすることをくれぐれも言ってやって、

少納言がどこかへ隠したように申し上げさせたのである。

宮は御落胆あそばされた。

尼君も宮邸へ姫君の移って行くことを非常に嫌っていたから、

乳母の出すぎた考えから、

正面からは拒《こば》まずにおいて、

そっと勝手に姫君をつれ出してしまったのだとお思いになって、

宮は泣く泣くお帰りになったのである。

 

「もし居所がわかったら知らせてよこすように」

宮のこのお言葉を女房たちは

苦しい気持ちで聞いていたのである。

宮は僧都《そうず》の所へも捜しにおやりになったが、

姫君の行くえについては何も得る所がなかった。

美しかった小女王の顔をお思い出しになって

宮は悲しんでおいでになった。

夫人はその母君をねたんでいた心も長い時間に忘れていって、

自身の子として育てるのを楽しんでいたことが

水泡《すいほう》に帰したのを残念に思った。  

 

そのうち二条の院の西の対に女房たちがそろった。

若紫のお相手の子供たちは、

大納言家から来たのは若い源氏の君、

東の対のはきれいな女王といっしょに遊べるのを喜んだ。

若紫は源氏が留守になったりした夕方などには

尼君を恋しがって泣きもしたが、

父宮を思い出すふうもなかった。

初めから稀々《まれまれ》にしか見なかった父宮であったから、

今は第二の父と思っている源氏にばかり馴染《なじ》んでいった。

 

外から源氏の帰って来る時は、

自身がだれよりも先に出迎えてかわいいふうにいろいろな話をして、

懐《ふところ》の中に抱かれて

少しもきまり悪くも恥ずかしくも思わない。

こんな風変わりな交情がここにだけ見られるのである。

大人の恋人との交渉には微妙な面倒があって、

こんな障害で恋までもそこねられるのではないかと

我ながら不安を感じることがあったり、

女のほうはまた年じゅう恨み暮らしに暮らすことになって、

ほかの恋がその間に芽ばえてくることにもなる。

この相手にはそんな恐れは少しもない。

ただ美しい心の慰めであるばかりであった。

娘というものも、

これほど大きくなれば

父親はこんなにも接近して世話ができず、

夜も同じ寝室にはいることは許されないわけであるから、

こんなおもしろい間柄というものはないと

源氏は思っているらしいのである。

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