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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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藤壺の宮との密かな逢瀬【源氏68 第五帖 若紫11】藤壺の宮は身体の調子がすぐれず自邸に。罪悪感を持ちつつも 王の命婦に手引きをさせ密かな逢瀬を重ねる

〈古文🪷〉

少納言の乳母と言ふ人あべし。尋ねて、詳しう語らへ」

などのたまひ知らす。

「さも、かからぬ隈なき御心かな。

 さばかりいはけなげなりしけはひを」

と、まほならねども、見しほどを思ひやるもをかし。

 

わざと、かう御文あるを、僧都もかしこまり聞こえたまふ。

少納言に消息して会ひたり。

詳しく、思しのたまふさま、おほかたの御ありさまなど語る。

言葉多かる人にて、つきづきしう言ひ続くれど、

「いとわりなき御ほどを、いかに思すにか」

と、ゆゆしうなむ、誰も誰も思しける。

 

御文にも、いとねむごろに書いたまひて、

例の、中に、

「かの御放ち書きなむ、なほ見たまへまほしき」とて、

「あさか山浅くも人を思はぬになど山の井のかけ離るらむ」

御返し、

「汲み初めてくやしと聞きし山の井の浅きながらや影を見るべき」

惟光も同じことを聞こゆ。

 

「このわづらひたまふことよろしくは、このごろ過ぐして、

 京の殿に渡りたまひてなむ、聞こえさすべき」

とあるを、心もとなう思す。

 

藤壺の宮、悩みたまふことありて、まかでたまへり。

上の、おぼつかながり、嘆ききこえたまふ御気色も、

いといとほしう見たてまつりながら、

かかる折だにと、心もあくがれ惑ひて、

何処にも何処にも、まうでたまはず、

内裏にても里にても、昼はつれづれと眺め暮らして、

暮るれば、王命婦を責め歩きたまふ。

 

いかがたばかりけむ、いとわりなくて見たてまつるほどさへ、

現とはおぼえぬぞ、わびしきや。

 

宮も、あさましかりしを思し出づるだに、

世とともの御もの思ひなるを、

さてだにやみなむと深う思したるに、いと憂くて、

いみじき御気色なるものから、なつかしうらうたげに、

さりとてうちとけず、

心深う恥づかしげなる御もてなしなどの、

なほ人に似させたまはぬを、

「などか、なのめなることだにうち交じりたまはざりけむ」

と、つらうさへぞ思さるる。

何ごとをかは聞こえ尽くしたまはむ。

 

〈現代文🪷〉

少納言の乳母《めのと》という人がいるはずだから、

 その人に逢って詳しく私のほうの心持ちを伝えて来てくれ」

などと源氏は命じた。

どんな女性にも関心を持つ方だ、

姫君はまだきわめて幼稚であったようだのに

と惟光は思って、真正面から見たのではないが、

自身がいっしょに隙見《すきみ》をした時のことを

思ってみたりもしていた。

 

今度は五位の男を使いにして手紙をもらったことに

僧都は恐縮していた。

惟光少納言に面会を申し込んで逢った。

源氏の望んでいることを詳しく伝えて、

そのあとで源氏の日常の生活ぶりなどを語った。

多弁な惟光は相手を説得する心で 上手にいろいろ話したが、

僧都も尼君も少納言も稚《おさな》い女王への結婚の申し込みは

どう解釈すべきであろうとあきれているばかりだった。

 

手紙のほうにもねんごろに申し入れが書かれてあって、

「一つずつ離してお書きになる姫君のお字を

 ぜひ私に見せていただきたい。」

ともあった。

例の中に封じたほうの手紙には、

浅香山 浅くも人を 思はぬに

 など山の井の かけ離るらん』

この歌が書いてある。

返事、

『汲《く》み初《そ》めて くやしと聞きし 山の井の

 浅きながらや 影を見すべき』

尼君が書いたのである。

惟光《これみつ》が聞いて来たのもその程度の返辞であった。

 

「尼様の御容体が少しおよろしくなりましたら

 京のお邸《やしき》へ帰りますから、

 そちらから改めてお返事を申し上げることにいたします」

と言っていたというのである。

源氏はたよりない気がしたのであった。

 

藤壺の宮が少しお病気におなりになって

宮中から自邸へ退出して来ておいでになった。

帝が日々恋しく思召す御様子に 源氏は同情しながらも、

稀《まれ》にしかないお実家《さと》住まいの機会を

とらえないでは またいつ恋しいお顔が見られるかと夢中になって、

それ以来どの恋人の所へも行かず

宮中の宿直所《とのいどころ》ででも、

二条の院ででも、 昼間は終日物思いに暮らして、

命婦《おうみょうぶ》に手引きを迫ることのほかは何もしなかった。

 

命婦がどんな方法をとったのか

与えられた無理なわずかな逢瀬《おうせ》の中にいる時も、

幸福が現実の幸福とは思えないで夢としか思われないのが、

源氏はみずから残念であった。

 

宮も過去のある夜の思いがけぬ過失の罪悪感が

一生忘れられないもののように思っておいでになって、

せめてこの上の罪は重ねまいと深く思召したのであるのに、

またもこうしたことを

他動的に繰り返すことになったのを 悲しくお思いになって、

恨めしいふうでおありになりながら、柔らかな魅力があって、

しかも打ち解けておいでにならない最高の貴女の態度が

美しく思われる源氏は、

やはりだれよりもすぐれた女性である、

なぜ一所でも欠点を持っておいでにならないのであろう

それであれば自分の心は

こうして死ぬほどにまで惹かれないで 楽であろうと思うと

源氏は この人の存在を

自分に知らせた運命さえも恨めしく思われるのである。

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