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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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【源氏物語 64 第5帖 若紫 8】姫を将来の結婚相手として引き取りたいと申し出る源氏 戸惑う尼君

源氏物語 64 第5帖 若紫 8】〈古文〉

「げに、若やかなる人こそうたてもあらめ、

 まめやかにのたまふ、かたじけなし」

とて、ゐざり寄りたまへり。

「うちつけに、あさはかなりと、御覧ぜられぬべきついでなれど、

 心にはさもおぼえはべらねば。仏はおのづから」

とて、おとなおとなしう、恥づかしげなるにつつまれて、

とみにもえうち出でたまはず。

「げに、思ひたまへ寄りがたきついでに、かくまでのたまはせ、

 聞こえさするも、いかが」

とのたまふ。

 

「あはれにうけたまはる御ありさまを、

 かの過ぎたまひにけむ御かはりに、思しないてむや。

 言ふかひなきほどの齢にて、

 むつましかるべき人にも立ち後れはべりにければ、

 あやしう浮きたるやうにて、年月をこそ重ねはべれ。

 同じさまにものしたまふなるを、たぐひになさせたまへと、

 いと聞こえまほしきを、かかる折はべりがたくてなむ、

 思されむところをも憚らず、うち出ではべりぬる」

と聞こえたまへば、

「いとうれしう思ひたまへぬべき御ことながらも、

 聞こしめしひがめたることなどやはべらむと、

 つつましうなむ。

 あやしき身一つを頼もし人にする人なむはべれど、

 いとまだ言ふかひなきほどにて、

 御覧じ許さるる方もはべりがたげなれば、

 えなむうけたまはりとどめられざりける」

とのたまふ。

 

「みな、おぼつかなからずうけたまはるものを、

 所狭う思し憚らで、

 思ひたまへ寄るさまことなる心のほどを、御覧ぜよ」

と聞こえたまへど、

いと似げなきことを、さも知らでのたまふ、と思して、

心解けたる御答へもなし。

 

僧都おはしぬれば、

「よし、かう聞こえそめはべりぬれば、いと頼もしうなむ」

とて、おし立てたまひつ。

 

暁方になりにければ、

法華三昧行ふ堂の懺法の声、山おろしにつきて聞こえくる、

いと尊く、滝の音に響きあひたり。

「吹きまよふ深山おろしに夢さめて

 涙もよほす滝の音かな」

 

「さしぐみに袖ぬらしける山水に

 澄める心は騒ぎやはする

耳馴れはべりにけりや」

と聞こえたまふ。

 

〈現代文〉

「そうだね、若い人こそ困るだろうが私など、まあよい。

 丁寧に言っていらっしゃるのだから」

尼君は出て行った。

「出来心的な軽率な相談を持ちかける者だとお思いになるのが

 かえって当然なような、

 こんな時に申し上げるのは私のために不利なんですが、

 誠意をもってお話しいたそうとしておりますことは

 仏様がご存じでしょう」

と源氏は言ったが、

相当な年配の貴女が静かに前にいることを思うと

急に希望の件が持ち出されないのである。

「思いがけぬ所で、お泊まり合わせになりました。

 あなた様から御相談を承りますのを前生《ぜんしょう》に

 根を置いていないこととどうして思えましょう」

と尼君は言った。

 

「お母様をお亡くしになりましたお気の毒な女王さんを 、

 お母様の代わりとして私へお預けくださいませんでしょうか。

 私も早く母や祖母に別れたものですから、

 私もじっと落ち着いた気持ちもなく今日に至りました。

 女王さんも同じような御境遇なんですから、

 私たちが将来結婚することを今から許して置いていただきたいと、

 私はこんなことを前から御相談したかったので、

 今は悪くおとりになるかもしれない時である、

 折りがよろしくないと思いながら申し上げてみます」

 

「それは非常にうれしいお話でございますが、

 何か話をまちがえて聞いておいでになるのではないかと思いますと、

 どうお返辞を申し上げてよいかに迷います。

 私のような者一人をたよりにしております子供が一人おりますが、

 まだごく幼稚なもので、どんなに寛大なお心ででも、

 将来の奥様にお擬しになることは無理でございますから、

 私のほうで御相談に乗せていただきようもございません」  

と尼君は言うのである。

 

「私は何もかも存じております。

 そんな年齢の差などはお考えにならずに、

 私がどれほどそうなるのを望むかという熱心の度を御覧ください」

源氏がこんなに言っても、

尼君のほうでは

女王の幼齢なことを知らないでいるのだと思う先入見があって

源氏の希望を問題にしようとはしない。

 

僧都《そうず》が源氏の部屋のほうへ来るらしいのを機会に、

「まあよろしいです。御相談にもう取りかかったのですから、

 私は実現を期します」

と言って、

源氏は屏風《びょうぶ》をもとのように直して去った。

 

もう明け方になっていた。

法華《ほっけ》の三昧《ざんまい》を行なう堂の

尊い懺法《せんぽう》の声が山おろしの音に混じり、

滝がそれらと和する響きを作っているのである。

 

『吹き迷ふ 深山《みやま》おろしに 夢さめて

 涙催す 滝の音かな』

 これは源氏の作。

『さしぐみに袖|濡らしける 山水に

 すめる心は 騒ぎやはする』

もう馴れ切ったものですよ」

僧都は答えた。

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