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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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源氏は僧都の山荘に移る。可憐で美しい少女に心を奪われる。祖母は按察使《あぜち》大納言の未亡人【源氏物語 61 第5帖 若紫5】

立つ音すれば、帰りたまひぬ。

「あはれなる人を見つるかな。

 かかれば、この好き者どもは、

 かかる歩きをのみして、

 よくさるまじき人をも見つくるなりけり。

 たまさかに立ち出づるだに、

 かく思ひのほかなることを見るよ」と、

をかしう思す。

「さても、いとうつくしかりつる児かな。

 何人ならむ。かの人の御代はりに、

 明け暮れの慰めにも見ばや」

と思ふ心、深うつきぬ。

 

うち臥したまへるに、

僧都の御弟子、惟光を呼び出でさす。

ほどなき所なれば、君もやがて聞きたまふ。

 

「過りおはしましけるよし、ただ今なむ、

 人申すに、おどろきながら、

 さぶらべきを、

 なにがしこの寺に籠もりはべりとは、

 しろしめしながら、忍びさせたまへるを、

 憂はしく思ひたまへてなむ。

 草の御むしろも、

 この坊にこそ設けはべるべけれ。

 いと本意なきこと」

と申したまへり。

 

「いぬる十余日のほどより、

 瘧病にわづらひはべるを、

 度重なりて堪へがたくはべれば、

 人の教へのまま、

 にはかに尋ね入りはべりつれど、

 かやうなる人の験あらはさぬ時、

 はしたなかるべきも、ただなるよりは、

 いとほしう思ひたまへつつみてなむ、

 いたう忍びはべりつる。

 今、そなたにも」

とのたまへり。

 

すなはち、僧都参りたまへり。

法師なれど、

いと心恥づかしく人柄もやむごとなく、

世に思はれたまへる人なれば、

軽々しき御ありさまを、はしたなう思す。

かく籠もれるほどの御物語など聞こえたまひて、

「同じ柴の庵なれど、

 すこし涼しき水の流れも御覧ぜさせむ」

と、せちに聞こえたまへば、

かの、

まだ見ぬ人びとにことことしう言ひ聞かせつるを、

つつましう思せど、

あはれなりつるありさまもいぶかしくて、

おはしぬ。

 

げに、いと心ことによしありて、

同じ木草をも植ゑなしたまへり。

月もなきころなれば、遣水に篝火ともし、

灯籠なども参りたり。

南面いと清げにしつらひたまへり。

そらだきもの、いと心にくく薫り出で、

名香の香など匂ひみちたるに、

君の御追風いとことなれば、

内の人びとも心づかひすべかめり。

 

僧都、世の常なき御物語、

後世のことなど聞こえ知らせたまふ。

我が罪のほど恐ろしう、

「あぢきなきことに心をしめて、

 生ける限りこれを思ひ悩むべきなめり。

 まして後の世のいみじかるべき」

思し続けて、

かうやうなる住まひもせまほしうおぼえたまふものから、

昼の面影心にかかりて恋しければ、

「ここにものしたまふは、誰れにか。

 尋ねきこえまほしき夢を見たまへしかな。

 今日なむ思ひあはせつる」

と聞こえたまへば、うち笑ひて、

「うちつけなる御夢語りにぞはべるなる。

 尋ねさせたまひても、

 御心劣りせさせたまひぬべし。

 故按察使大納言は、

 世になくて久しくなりはべりぬれば、

 えしろしめさじかし。

 その北の方なむ、なにがしが妹にはべる。

 かの按察使かくれて後、世を背きてはべるが、

 このごろ、わづらふことはべるにより、

 かく京にもまかでねば、

 頼もし所に籠もりてものしはべるなり」

と聞こえたまふ。

 

僧都がこの座敷を出て行く気配《けはい》がするので

源氏も山上の寺へ帰った。

源氏は思った。

自分は可憐な人を発見することができた、

だから自分といっしょに来ている若い連中は

旅というものをしたがるのである、

そこで意外な収穫を得るのだ、

たまさかに京を出て来ただけでも

こんな思いがけないことがあると、

それで源氏はうれしかった。

それにしても美しい子である、

どんな身分の人なのであろう、

あの子を手もとに迎えて

逢《あ》いがたい人の恋しさが 慰められるものなら

ぜひそうしたいと源氏は深く思ったのである。

 

寺で皆が寝床についていると、

僧都の弟子が訪問して来て、

惟光《これみつ》に逢いたいと申し入れた。

狭い場所であったから惟光へ言う事が源氏にもよく聞こえた。

「手前どもの坊の奥の寺へおいでになりましたことを

人が申しますのでただ今承知いたしました。

すぐに伺うべきでございますが、

私がこの山におりますことを御承知のあなた様が

素通りをあそばしたのは、

何かお気に入らないことがあるかと

御遠慮をする心もございます。

御宿泊の設けも行き届きませんでも

当坊でさせていただきたいものでございます」

と言うのが使いの伝える僧都の挨拶だった。

 

「今月の十幾日ごろから

 私は瘧病《わらわやみ》に かかっておりましたが、

 たびたびの発作で堪えられなくなりまして、

 人の勧めどおりに山へ参ってみましたが、

 もし効験《ききめ》が見えませんでした時には

 一人の僧の不名誉になることですから、

 隠れて来ておりました。

 そちらへも後刻伺うつもりです」

と源氏は惟光に言わせた。

 

それから間もなく僧都が訪問して来た。

尊敬される人格者で、

僧ではあるが貴族出のこの人に軽い旅装で逢うことを

源氏はきまり悪く思った。

二年越しの山籠《やまごも》りの生活を

僧都は語ってから、

「僧の家というものはどうせ皆寂しい貧弱なものですが、

 ここよりは少しきれいな水の流れなども

 庭にはできておりますから、

 お目にかけたいと思うのです」

僧都は源氏の来宿を乞《こ》うてやまなかった。

源氏を知らないあの女の人たちに

たいそうな顔の吹聴などをされていたことを思うと、

しりごみもされるのであるが、

心を惹《ひ》いた少女のことも詳しく知りたいと思って

源氏は僧都の坊へ移って行った。

 

主人の言葉どおりに庭の作り一つをいっても

ここは優美な山荘であった、

月はないころであったから、

流れのほとりに《かがり》を焚《た》かせ、

燈籠《とうろう》を吊《つ》らせなどしてある。

南向きの室を美しく装飾して源氏の寝室ができていた。

奥の座敷から洩《も》れてくる

薫香《くんこう》のにおいと

仏前に焚かれる名香の香が

入り混じって漂っている山荘に、

新しく源氏の追い風が加わったこの夜を

女たちも晴れがましく思った。

僧都は人世の無常さと来世の頼もしさを

源氏に説いて聞かせた。

源氏は自身の罪の恐ろしさが自覚され、

来世で受ける罰の大きさを思うと、

そうした常ない人生から遠ざかったこんな生活に

自分もはいってしまいたいなどと思いながらも、

夕方に見た小さい貴女が心にかかって恋しい源氏であった。

 

「ここへ来ていらっしゃるのはどなたなんですか、

 その方たちと自分とが因縁のあるというような夢を

 私は前に見たのですが

 なんだか今日こちらへ伺って謎の糸口を得た気がします」

と源氏が言うと、

「突然な夢のお話ですね。

 それがだれであるかをお聞きになっても

 興がおさめになるだけでございましょう。

 前の按察使《あぜち》大納言

 もうずっと早く亡くなったのでございますから

 ご存じはありますまい。

 その夫人が私の姉です。

 未亡人になってから尼になりまして、

 それがこのごろ病気なものですから、

 私が山にこもったきりになっているので

 心細がってこちらへ来ているのです」

僧都の答えはこうだった。

 

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