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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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源氏は初めて 夕顔に顔を見せる【源氏物語44 第4帖 夕顔10】夕顔も打ち解けている。六条御息所を気に掛ける。夜、枕元に美しい女が座っている

夕露に紐とく花は玉鉾の

 たよりに見えし縁にこそありけれ

 露の光やいかに」

とのたまへば、後目に見おこせて、

 「光ありと見し夕顔のうは露は

  たそかれ時のそら目なりけり」

とほのかに言ふ。

をかしと思しなす。

げに、うちとけたまへるさま、

世になく、所から、

まいてゆゆしきまで見えたまふ。

 

「尽きせず隔てたまへるつらさに、

 あらはさじと思ひつるものを。

 今だに名のりしたまへ。

 いとむくつけし」

とのたまへど、

「海人の子なれば」とて、

さすがにうちとけぬさま、

いとあいだれたり。

「よし、これも我からなめり」と、

怨みかつは語らひ、

暮らしたまふ。

 

惟光、尋ねきこえて、

御くだものなど参らす。

右近が言はむこと、

さすがにいとほしければ、

近くもえさぶらひ寄らず。

 

「かくまでたどり歩きたまふ、をかしう、

 さもありぬべきありさまにこそは」

と推し量るにも、

「我がいとよく思ひ寄りぬべかりしことを、

 譲りきこえて、心ひろさよ」

など、めざましう思ひをる。

 

たとしへなく静かなる夕べの空を眺めたまひて、

奥の方は暗うものむつかしと、

女は思ひたれば、

端の簾を上げて、添ひ臥したまへり。

夕映えを見交はして、

女も、かかるありさまを、

思ひのほかにあやしき心地はしながら、

よろづの嘆き忘れて、

すこしうちとけゆく気色、

いとらうたし。

つと御かたはらに添ひ暮らして、

物をいと恐ろしと思ひたるさま、

若う心苦し。

 

格子とく下ろしたまひて、

大殿油参らせて、

「名残りなくなりにたる御ありさまにて、

 なほ心のうちの隔て残したまへるなむつらき」と、

恨みたまふ。

 

「内裏に、いかに求めさせたまふらむを、

 いづこに尋ぬらむ」

と、思しやりて、かつは、

「あやしの心や。六条わたりにも、

 いかに思ひ乱れたまふらむ。

恨みられむに、苦しう、ことわりなり」と、

いとほしき筋は、まづ思ひきこえたまふ。

 

何心もなきさしむかひを、あはれと思すままに、

「あまり心深く、

 見る人も苦しき御ありさまを、

 すこし取り捨てばや」と、

思ひ比べられたまひける。

宵過ぐるほど、すこし寝入りたまへるに、

御枕上に、いとをかしげなる女ゐて‥

 

『夕露に ひもとく花は 玉鉾《たまぼこ》の

 たよりに見えし 縁《えに》こそありけれ』

 あなたの心あてにそれかと思うと言った時の人の顔を 

 近くに見て幻滅が起こりませんか」

と言う源氏の君を後目《しりめ》に女は見上げて、

『光ありと 見し夕顔の うは露は

 黄昏時《たそがれどき》の そら目なりけり』

と言った。

冗談までも言う気になったのが源氏にはうれしかった。

打ち解けた瞬間から源氏の美はあたりに放散した。

古くさく荒れた家との対照はまして魅惑的だった。

 

「いつまでも真実のことを打ちあけてくれないのが恨めしくって、

 私もだれであるかを隠し通したのだが、負けた。

 もういいでしょう、名を言ってください、

 人間離れがあまりしすぎます」

 と源氏が言っても、

「家も何もない女ですもの」

と言ってそこまではまだ打ち解けぬ様子も美しく感ぜられた。

「しかたがない。私が悪いのだから」

と怨《うら》んでみたり、

永久の恋の誓いをし合ったりして時を送った。

 

惟光《これみつ》が源氏の居所を突きとめてきて、

用意してきた菓子などを座敷へ持たせてよこした。

これまで白《しら》ばくれていた態度を

右近《うこん》に恨まれるのがつらくて、

近い所へは顔を見せない。

 

惟光は源氏が人騒がせに居所を不明にして、

一日を犠牲にするまで熱心になりうる相手の女は、

それに価する者であるらしいと想像をして、

当然自己のものになしうるはずの人を主君にゆずった自分は

広量なものだと嫉妬《しっと》に似た心で

自嘲《じちょう》もし、羨望《せんぼう》もしていた。

 

静かな静かな夕方の空をながめていて、

奥のほうは暗くて気味が悪いと夕顔が思うふうなので、

縁の簾《すだれ》を上げて

夕映《ゆうば》えの雲をいっしょに見て、

女も源氏とただ二人で暮らしえた一日に、

まだまったく落ち着かぬ恋の境地とはいえ、

過去に知らない満足が得られたらしく、

少しずつ打ち解けた様子が可憐《かれん》であった。

じっと源氏のそばへ寄って、

この場所がこわくてならぬふうであるのがいかにも若々しい。

 

格子《こうし》を早くおろして灯《ひ》をつけさせてからも、

「私のほうにはもう何も秘密が残っていないのに、

 あなたはまだそうでないのだからいけない」

などと源氏は恨みを言っていた。

 

陛下はきっと今日も自分をお召しになったに違いないが、

捜す人たちはどう見当をつけてどこへ行っているだろう、

などと想像をしながらも、

これほどまでにこの女を溺愛している自分を

源氏は不思議に思った。

六条の貴女も

どんなに煩悶《はんもん》をしていることだろう、

恨まれるのは苦しいが恨むのは道理であると、

恋人のことはこんな時にもまず気にかかった。

 

無邪気に男を信じていっしょにいる女に愛を感じるとともに、

あまりにまで高い自尊心に

みずから煩《わずら》わされている六条の貴女が思われて、

少しその点を取り捨てたならと、

眼前の人に比べて源氏は思うのであった。

十時過ぎに少し寝入った源氏は 枕の所に

美しい女がすわっているのを見た。

 

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