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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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夕顔の女人の元に 顔を隠し変装をして通う源氏【源氏物語 40 第4帖 夕顔 6】御装束をもやつれたる狩の御衣をたてまつり、さまを変へ、顔をもほの見せたまはず、夜深きほどに、人をしづめて出で入りなどしたまへば‥

「たしかにその車をぞ見まし」

とのたまひて、

「もし、かのあはれに忘れざりし人にや」と、

思ほしよるも、

いと知らまほしげなる御気色を見て、

「私の懸想もいとよくしおきて、

 案内も残るところなく見たまへおきながら、

 ただ、我れどちと知らせて、

 物など言ふ若きおもとのはべるを、

 そらおぼれしてなむ、隠れまかり歩く。

 いとよく隠したりと思ひて、

 小さき子どもなどのはべるが言誤りしつべきも、

 言ひ紛らはして、

 また人なきさまを強ひてつくりはべる」

など、語りて笑ふ。

 

「尼君の訪ひにものせむついでに、かいま見せさせよ」

とのたまひけり。

かりにても、宿れる住ひのほどを思ふに、

「これこそ、かの人の定め、

 あなづりし下の品ならめ。

 その中に、思ひの外にをかしきこともあらば」

など、思すなりけり。

惟光、

いささかのことも御心に違はじと思ふに、

おのれも隈なき好き心にて、

いみじくたばかりまどひ歩きつつ、

しひておはしまさせ初めてけり。

このほどのこと、くだくだしければ、

例のもらしつ。

 

女、さしてその人と尋ね出でたまはねば、

我も名のりをしたまはで、

いとわりなくやつれたまひつつ、

例ならず下り立ちありきたまふは、

おろかに思されぬなるべし、

と見れば、

我が馬をばたてまつりて、

御供に走りありく。

 

「懸想人のいとものげなき足もとを、

 見つけられてはべらむ時、

 からくもあるべきかな」

とわぶれど、

人に知らせたまはぬままに、

かの夕顔のしるべせし随身ばかり、

さては、顔むげに知るまじき童一人ばかりぞ、

率ておはしける。

 

「もし思ひよる気色もや」とて、

隣に中宿をだにしたまはず。

女も、

いとあやしく心得ぬ心地のみして、

御使に人を添へ、暁の道をうかがはせ、

御在処見せむと尋ぬれど、

そこはかとなくまどはしつつ、

さすがに、

あはれに見ではえあるまじく、

この人の御心にかかりたれば、

便なく軽々しきことと、

思ほし返しわびつつ、

いとしばしばおはします。

 

かかる筋は、

まめ人の乱るる折もあるを、

いとめやすくしづめたまひて、

人のとがめきこゆべき振る舞ひはしたまはざりつるを、

あやしきまで

今朝のほど、昼間の隔ても、

おぼつかなくなど、思ひわづらはれたまへば、

かつは、いともの狂ほしく、

さまで心とどむべきことのさまにもあらずと、

いみじく思ひさましたまふに、

人のけはひ、

いとあさましくやはらかにおほどきて、

もの深く重き方はおくれて、

ひたぶるに若びたるものから、

世をまだ知らぬにもあらず。

いとやむごとなきにはあるまじ、

いづくにいとかうしもとまる心ぞ、

と返す返す思す。

 

いとことさらめきて、

御装束をもやつれたる狩の御衣をたてまつり、

さまを変へ、

顔をもほの見せたまはず、

夜深きほどに、

人をしづめて出で入りなどしたまへば、

昔ありけむものの変化めきて、

うたて思ひ嘆かるれど、

人の御けはひ、

はた、手さぐりもしるべきわざなりければ、

「誰ればかりにかはあらむ。

 なほこの好き者のし出でつるわざなめり」と、

大夫を疑ひながら、

せめてつれなく知らず顔にて、

かけて思ひよらぬさまに、

たゆまずあざれありけば、

いかなることにかと心得がたく、

女方

あやしうやう違ひたるもの思ひをなむしける。

 

「確かにその車の主が知りたいものだ」 

  もしかすれば それは頭中将が 忘られないように話した

  常夏《とこなつ》の歌の女ではないかと思った源氏の、

  も少しよく探りたいらしい顔色を見た惟光《これみつ》は、 

「われわれ仲間の恋と見せかけておきまして、

  実はその上に御主人のいらっしゃることも

 こちらは承知しているのですが、

  女房相手の安価な恋の奴《やっこ》になりすましております。 

  向こうでは上手に隠せていると思いまして

 私が訪ねて行ってる時などに、

  女の童《わらわ》などがうっかり言葉をすべらしたりいたしますと、 

  いろいろに言い紛らしまして、

 自分たちだけだというふうを作ろうといたします」 

と言って笑った。

 

「おまえの所へ尼さんを見舞いに行った時に

 隣をのぞかせてくれ」 

 と源氏は言っていた。 

 たとえ仮住まいであってもあの五条の家にいる人なのだから、

 下の品の女であろうが、

 そうした中におもしろい女が発見できればと思うのである。

 源氏の機嫌を取ろうと一所懸命の惟光であったし、

 彼自身も好色者で他の恋愛にさえも

 興味を持つほうであったから、 

 いろいろと苦心をした末に源氏を

 隣の女の所へ通わせるようにした。

 

 女のだれであるかをぜひ知ろうともしないとともに、

 源氏は自身の名もあらわさずに、

 思いきり質素なふうをして多くは車にも乗らずに通った。

 深く愛しておらねばできぬことだと惟光は解釈して、

 自身の乗る馬に源氏を乗せて、

自身は徒歩で供をした。 

 

「私から申し込みを受けたあすこの女は

 この態《てい》を見たら驚くでしょう」 

 などとこぼしてみせたりしたが、

このほかには最初夕顔の花を折りに行った随身と、

それから源氏の召使であるとも

あまり顔を知られていない小侍だけを 供にして行った。

 

 それから知れることになってはとの気づかいから、

 隣の家へ寄るようなこともしない。

 女のほうでも不思議でならない気がした。 

手紙の使いが来るとそっと人をつけてやったり、 

 男の夜明けの帰りに道を窺《うかが》わせたりしても、

 先方は心得ていてそれらをはぐらかしてしまった。

しかも源氏の心は十分に惹《ひ》かれて、

一時的な関係にとどめられる気はしなかった。

これを不名誉だと思う自尊心に悩みながら

しばしば五条通いをした。

 

恋愛問題ではまじめな人も過失をしがちなものであるが、

この人だけはこれまで女のことで

世間の批難を招くようなことをしなかったのに、 

夕顔の花に傾倒してしまった心だけは別だった。 

別れ行く間も昼の間もその人を

かたわらに見がたい苦痛を強く感じた。

源氏は自身で、気違いじみたことだ、

それほどの価値がどこにある恋人かなどと

反省もしてみるのである。

驚くほど柔らかでおおような性質で、

深味のあるような人でもない。

若々しい一方の女であるが、

処女であったわけでもない。

貴婦人ではないようである。 

どこがそんなに自分を惹きつけるのであろうと

不思議でならなかった。

 

わざわざ平生の源氏に

用のない狩衣などを 着て変装した源氏は

 顔なども全然見せない。 

ずっと更《ふ》けてから、人の寝静まったあとで行ったり、

 夜のうちに帰ったりするのであるから、

 女のほうでは

昔の三輪《みわ》の神の話のような気がして 

 気味悪く思われないではなかった。 

しかしどんな人であるかは

手の触覚からでもわかるものであるから、

若い風流男以外な者に源氏を観察していない。

やはり好色な隣の五位《ごい》が

導いて来た人に違いないとを疑っているが、

その人はまったく気がつかぬふうで

相変わらず女房の所へ手紙を送って来たり、

訪《たず》ねて来たりするので、

 どうしたことかと女のほうでも

普通の恋の物思いとは違った煩悶《はんもん》をしていた。 

 

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