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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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源氏は僧都の山荘に泊まる【源氏物語 63 第5帖 若紫7】貴族的な良い雰囲気の中 源氏は 尼君に姫君のことで相談を持ちかける。

源氏物語 63 第5帖 若紫7】〈古文〉

内にも、人の寝ぬけはひしるくて、いと忍びたれど、

数珠の脇息に引き鳴らさるる音ほの聞こえ、

なつかしううちそよめく音なひ、あてはかなりと聞きたまひて、

ほどもなく近ければ、外に立てわたしたる屏風の中を、

すこし引き開けて、扇を鳴らしたまへば、

おぼえなき心地すべかめれど、聞き知らぬやうにやとて、

ゐざり出づる人あなり。

 

すこし退きて、

「あやし、ひが耳にや」とたどるを、聞きたまひて、

「仏の御しるべは、暗きに入りても、さらに違ふまじかなるものを」

とのたまふ御声の、いと若うあてなるに、

うち出でむ声づかひも、恥づかしけれど、

「いかなる方の、御しるべにか。おぼつかなく」

と聞こゆ。

 

「げに、うちつけなりとおぼめきたまはむも、道理なれど、

 初草の若葉の上を見つるより

 旅寝の袖も露ぞ乾かぬ

 と聞こえたまひてむや」

とのたまふ。

「さらに、かやうの御消息、

 うけたまはりわくべき人もものしたまはぬさまは、

 しろしめしたりげなるを。誰れにかは」

と聞こゆ。

 「おのづからさるやうありて聞こゆるならむと思ひなしたまへかし」

とのたまへば、入りて聞こゆ。

 

「あな、今めかし。この君や、

 世づいたるほどにおはするとぞ、思すらむ。

 さるにては、かの『若草』を、いかで聞いたまへることぞ」

と、さまざまあやしきに、心乱れて、

久しうなれば、情けなしとて、

「枕結ふ今宵ばかりの露けさを

 深山の苔に比べざらなむ

 乾がたうはべるものを」

と聞こえたまふ。

 

「かうやうのついでなる御消息は、まださらに聞こえ知らず、

 ならはぬことになむ。かたじけなくとも、かかるついでに、

 まめまめしう聞こえさすべきことなむ」

と聞こえたまへれば、

尼君、

「ひがこと聞きたまへるならむ。

 いとむつかしき御けはひに、何ごとをかは答へきこえむ」

とのたまへば、

 「はしたなうもこそ思せ」

と人びと聞こゆ。

 

〈現代文〉

奥のほうの室にいる人たちも起きたままでいるのが 気配で知れていた。

静かにしようと気を配っているらしいが、

数珠《じゅず》が脇息《きょうそく》に触れて鳴る音などがして

女の起居《たちい》の衣摺《きぬず》れも

ほのかになつかしい音に耳へ通ってくる。

貴族的なよい感じである。

源氏はすぐ隣の室でもあったから

この座敷の奥に立ててある二つの屏風びょうぶの合わせ目を 少し引きあけて、

人を呼ぶために扇を鳴らした。

先方は意外に思ったらしいが、

無視しているように思わせたくないと思って、

一人の女が膝行《いざり》寄って来た。

 

襖子《からかみ》から少し遠いところで、

「不思議なこと、聞き違えかしら」

と言うのを聞いて、源氏が、

「仏の導いてくださる道は

 暗いところもまちがいなく行きうるというのですから」

という声の若々しい品のよさに、

奥の女は答えることもできない気はしたが、

「何のお導きでございましょう、

 こちらでは何もわかっておりませんが」

と言った。

 

「突然ものを言いかけて、失敬だとお思いになるのはごもっともですが、

『初草の 若葉の上を 見つるより

 旅寝の袖《そで》も 露ぞ乾《かわ》かぬ』

 と申し上げてくださいませんか」

「そのようなお言葉を頂戴あそばす方が

 いらっしゃらないことはご存じのようですが、どなたに」

「そう申し上げるわけがあるのだとお思いになってください」

源氏がこう言うので、女房は奥へ行ってそう言った。

 

まあ艶《えん》な方らしい御挨拶である、

女王《にょおう》さんがもう少し大人になっているように、

お客様は勘違いをしていられるのではないか、

それにしても若草にたとえた言葉が

どうして源氏の耳にはいったのであろうと思って、

尼君は多少不安な気もするのである。

しかし返歌のおそくなることだけは見苦しいと思って、

『枕結《ゆ》ふ 今宵ばかりの 露けさを

 深山《みやま》の苔に くらべざらなん』

とてもかわく間などはございませんのに」

と返辞をさせた。

 

「こんなお取り次ぎによっての会談は私に経験のないことです。

 失礼ですが、

 今夜こちらで御厄介《ごやっかい》になりましたのを機会に

 まじめに御相談のしたいことがございます」

と源氏が言う。

「何をまちがえて聞いていらっしゃるのだろう。

源氏の君にものを言うような晴れがましいこと、

私には何もお返辞なんかできるものではない」

尼君はこう言っていた。

「それでも冷淡なお扱いをするとお思いになるでございましょうから」

と言って、人々は尼君の出るのを勧めた。 

 

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