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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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【源氏76 第五帖 若紫19】祖母が亡くなり悲しむ紫の君。父宮は 女王を慰めるものの、祖母が亡くなって深い悲しみに沈んでいる。源氏の代わりに 惟光が宿直をする。

🪷【古文】

「何か、さしも思す。

 今は世に亡き人の御ことはかひなし。

 おのれあれば」

など語らひきこえたまひて、

暮るれば帰らせたまふを、

いと心細しと思いて泣いたまへば、

宮うち泣きたまひて、

「いとかう思ひな入りたまひそ。

 今日明日、渡したてまつらむ」

など、返す返すこしらへおきて、

出でたまひぬ。

 

なごりも慰めがたう泣きゐたまへり。

行く先の身のあらむことなどまでも思し知らず、

ただ年ごろ立ち離るる折なうまつはしならひて、

今は亡き人となりたまひにける、

と思すがいみじきに、幼き御心地なれど、

胸つとふたがりて、

例のやうにも遊びたまはず、

昼はさても紛らはしたまふを、

夕暮となれば、いみじく屈したまへば、

かくてはいかでか過ごしたまはむと、

慰めわびて、乳母も泣きあへり。

 

君の御もとよりは、

惟光をたてまつれたまへり。

「参り来べきを、内裏より召あればなむ。

 心苦しう見たてまつりしも、しづ心なく」

とて、宿直人たてまつれたまへり。

 

「あぢきなうもあるかな。戯れにても、

 もののはじめにこの御ことよ」

「宮聞こし召しつけば、

 さぶらふ人びとのおろかなるにぞさいなまむ」

「あなかしこ、もののついでに、

 いはけなくうち出できこえさせたまふな」

など言ふも、

それをば何とも思したらぬぞ、

あさましきや。

少納言は、惟光にあはれなる物語どもして、

 

「あり経て後や、さるべき御宿世、

 逃れきこえたまはぬやうもあらむ。

 ただ今は、

 かけてもいと似げなき御ことと見たてまつるを、

 あやしう思しのたまはするも、

 いかなる御心にか、

 思ひ寄るかたなう乱れはべる。

 今日も、宮渡らせたまひて、

 『うしろやすく仕うまつれ。心幼くもてなしきこゆな』

 とのたまはせつるも、いとわづらはしう、

 ただなるよりは、

 かかる御好き事も思ひ出でられはべりつる」

など言ひて、

「この人もことあり顔にや思はむ」

など、あいなければ、

いたう嘆かしげにも言ひなさず。

 

大夫も、

「いかなることにかあらむ」

と、心得がたう思ふ。

参りて、ありさまなど聞こえければ、

あはれに思しやらるれど、

さて通ひたまはむも、

さすがにすずろなる心地して、

「軽々しうもてひがめたると、人もや漏り聞かむ」

など、つつましければ、

「ただ迎へてむ」

と思す。

御文はたびたびたてまつれたまふ。

暮るれば、例の大夫をぞたてまつれたまふ。

「障はる事どものありて、

 え参り来ぬを、おろかにや」

などあり。

 

🪷【現代文】

「なぜそんなにお祖母様のことばかりをあなたはお思いになるの、

 亡くなった人はしかたがないんですよ。

 お父様がおればいいのだよ」

と宮は言っておいでになった。

日が暮れるとお帰りになるのを見て、

心細がって姫君が泣くと、宮もお泣きになって、

「なんでもそんなに悲しがってはしかたがない。

 今日明日にでもお父様の所へ来られるようにしよう」

などと、いろいろになだめて宮はお帰りになった。

 

母も祖母も失った女の将来の心細さなどを女王は思うのでなく、

ただ小さい時から片時の間も離れず付き添っていた祖母が

死んだと思うことだけが非常に悲しいのである。

子供ながらも悲しみが胸をふさいでいる気がして

遊び相手はいても遊ぼうとしなかった。

それでも昼間は何かと紛れているのであったが、

夕方ごろからめいりこんでしまう。

こんなことで小さいおからだがどうなるかと思って、

乳母も毎日泣いていた。

 

その日源氏の所からは惟光《これみつ》をよこした。

伺うはずですが宮中からお召しがあるので失礼します。

おかわいそうに拝見した女王さんのことが気になってなりません。

源氏からの挨拶はこれで

惟光が代わりの宿直《とのい》をするわけである。

 

「困ってしまう。

 将来だれかと御結婚をなさらなければならない女王様を、

 これではもう源氏の君が奥様になすったような形を

 お取りになるのですもの。

 宮様がお聞きになったら

 私たちの責任だと言って おしかりになるでしょう」

 

「ねえ女王様、お気をおつけになって、

 源氏の君のことは宮様がいらっしゃいました時に

 うっかり言っておしまいにならないようになさいませね」

少納言が言っても、

小女王は、

それが何のためにそうしなければならないかがわからないのである。

少納言は惟光の所へ来て、身にしむ話をした。

 

「将来あるいはそうおなりあそばす運命かもしれませんが、

 ただ今のところはどうしても これは不つりあいなお間柄だと

 私らは存じますのに、

 御熱心に御縁組のことをおっしゃるのですもの、

 御酔興か何かと私どもは思うばかりでございます。

 今日も宮様がおいでになりまして、

 女の子だからよく気をつけてお守りをせい、

 うっかり油断をしていてはいけないなどとおっしゃいました時は、

 私ども何だか平気でいられなく思われました。

 昨晩のことなんか思い出すものですから」

などと言いながらも、

あまりに歎《なげ》いて見せては姫君の処女であることを

この人に疑わせることになると用心もしていた。

 

惟光もどんな関係なのかわからない気がした。

帰って惟光が報告した話から、

源氏はいろいろとその家のことが

哀れに思いやられてならないのであったが、

形式的には良人《おっと》らしく一泊したあとであるから、

続いて通って行かねばならぬが、

それはさすがに躊躇《ちゅうちょ》された。

酔興な結婚をしたように世間が批評しそうな点もあるので、

心がおけて行けないのである。

二条の院へ迎えるのが良策であると源氏は思った。

手紙は始終送った。

日が暮れると惟光を見舞いに出した。

やむをえぬ用事があって出かけられないのを、

私の不誠実さからだとお思いにならぬかと不安です。

などという手紙が書かれてくる。

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