2024-01-24から1日間の記事一覧
【古文】 君は何心もなく寝たまへるを、 抱きおどろかしたまふに、 おどろきて、宮の御迎へにおはしたると、 寝おびれて思したり。 御髪かき繕ひなどしたまひて、 「いざ、たまへ。宮の御使にて参り来つるぞ」 とのたまふに、 「あらざりけり」 と、あきれて…
【古文】 「宮より、 明日にはかに御迎へにとのたまはせたりつれば、 心あわたたしくてなむ。 年ごろの蓬生を離れなむも、さすがに心細く、 さぶらふ人びとも思ひ乱れて」 と、言少なに言ひて、 をさをさあへしらはず、 もの縫ひいとなむけはひなどしるけれ…
【古文】 「何か、さしも思す。 今は世に亡き人の御ことはかひなし。 おのれあれば」 など語らひきこえたまひて、 暮るれば帰らせたまふを、 いと心細しと思いて泣いたまへば、 宮うち泣きたまひて、 「いとかう思ひな入りたまひそ。 今日明日、渡したてまつ…
【古文】 いと忍びて通ひたまふ所の道なりけるを思し出でて、 門うちたたかせたまへど、聞きつくる人なし。 かひなくて、御供に声ある人して歌はせたまふ。 「朝ぼらけ霧立つ空のまよひにも 行き過ぎがたき妹が門かな」 と、二返りばかり歌ひたるに、 よしあ…