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【源氏物語84 第六帖 末摘花4】源氏と頭中将は一つの車に乗って左大臣家に🌿二人の貴公子は 荒れ屋敷の琴の音を思い出す。

源氏物語84 第六帖 末摘花4】

〈古文〉

おのおの契れる方にも、あまえて、

え行き別れたまはず、一つ車に乗りて、

月のをかしきほどに雲隠れたる道のほど、

笛吹き合せて大殿におはしぬ。

 

前駆なども追はせたまはず、忍び入りて、

人見ぬ廊に御直衣ども召して、着替へたまふ。

つれなう、今来るやうにて、

御笛ども吹きすさびておはすれば、

大臣、例の聞き過ぐしたまはで、

高麗笛取り出でたまへり。

いと上手におはすれば、いとおもしろう吹きたまふ。

御琴召して、内にも、

この方に心得たる人びとに弾かせたまふ。

 

中務の君、わざと琵琶は弾けど、

頭の君心かけたるをもて離れて、

ただこのたまさかなる御けしきのなつかしきをば、

え背ききこえぬに、おのづから隠れなくて、

大宮などもよろしからず思しなりたれば、

もの思はしく、はしたなき心地して、

すさまじげに寄り臥したり。

絶えて見たてまつらぬ所に、かけ離れなむも、

さすがに心細く思ひ乱れたり。

 

君たちは、ありつる琴の音を思し出でて、

あはれげなりつる住まひのさまなども、

やう変へてをかしう思ひつづけ、

「あらましごとに、いとをかしうらうたき人の、

 さて年月を重ねゐたらむ時、見そめて、

 いみじう心苦しくは、人にももて騒がるばかりや、

 わが心もさま悪しからむ」

などさへ、中将は思ひけり。

この君のかう気色ばみありきたまふを、

「まさに、さては、過ぐしたまひてむや」と、

なまねたう危ふがりけり。

 

その後、こなたかなたより、文などやりたまふべし。

いづれも返り事見えず、おぼつかなく心やましきに、

「あまりうたてもあるかな。

 さやうなる住まひする人は、もの思ひ知りたるけしき、

 はかなき木草、空のけしきにつけても、

 とりなしなどして、

 心ばせ推し測らるる折々あらむこそあはれなるべけれ、

 重しとても、いとかうあまり埋もれたらむは、心づきなく、悪びたり」

と、中将は、まいて心焦られしけり。

例の、隔てきこえたまはぬ心にて、

「しかしかの返り事は見たまふや。

 試みにかすめたりしこそ、はしたなくて止みにしか」

と、憂ふれば、

「さればよ、言ひ寄りにけるをや」と、

ほほ笑まれて、

「いさ、見むとしも思はねばにや、見るとしもなし」

と、答へたまふを、

「人わきしける」

 と思ふに、いとねたし。

 

【現代文】

源氏にも頭中将にも第二の行く先は決まっていたが、

戯談《じょうだん》を言い合っていることがおもしろくて、

別れられずに一つの車に乗って、

朧月夜《おぼろづきよ》の暗くなった時分に左大臣家に来た。

 

前駆に声も立てさせずに、そっとはいって、

人の来ない廊の部屋で直衣《のうし》に着かえなどしてから、

素知らぬ顔で、

今来たように笛を吹き合いながら

源氏の住んでいるほうへ来たのである。

その音《ね》に促されたように

左大臣高麗笛《こまぶえ》を持って来て源氏へ贈った。

その笛も源氏は得意であったからおもしろく吹いた。

合奏のために琴も持ち出されて女房の中でも

音楽のできる人たちが選ばれて弾《ひ》き手になった。

 

琵琶が上手である中将という女房は、

頭中将に恋をされながら、それにはなびかないで、

このたまさかにしか来ない源氏の心には

たやすく従ってしまった女であって、

源氏との関係がすぐに知れて、

このごろは大臣の夫人の内親王

中将を快くお思いにならなくなったのに悲観して、

今日も仲間から離れて物蔭《ものかげ》で横になっていた。

源氏を見る機会のない所へ行ってしまうのもさすがに心細くて、

煩悶《はんもん》をしているのである。

 

楽音の中にいながら二人の貴公子は

あの荒れ邸の琴の音を思い出していた。

ひどくなった家もおもしろいもののようにばかり思われて、

空想がさまざまに伸びていく。

可憐《かれん》な美人が、

あの家の中で埋没されたようになって暮らしていたあとで、

発見者の自分の情人にその人がなったら、

自分はまたその人の愛におぼれてしまうかもしれない。

それで方々で物議が起こることになったら

またちょっと自分は困るであろうなどとまで頭中将は思った。

 

源氏が決してただの気持ちで

あの邸を訪問したのではないことだけは確かである。

先を越すのはこの人であるかもしれないと思うと、

頭中将は口惜しくて、 自身の期待が危かしいようにも思われた。

 

それからのち二人の貴公子が

常陸《ひたち》の宮の姫君へ 手紙を送ったことは想像するにかたくない。

しかしどちらへも返事は来ない。

それが気になって頭中将は、いやな態度だ、

あんな家に住んでいるような人は

物の哀れに感じやすくなっていねばならないはずだ、

自然の木や草や空のながめにも心と一致するものを見いだして

おもしろい手紙を書いてよこすようでなければならない、

いくら自尊心のあるのはよいものでも、

こんなに返事をよこさない女には反感が起こるなどと思って

いらいらとするのだった。

仲のよい友だちであったから頭中将は隠し立てもせずに

その話を源氏にするのである。

 

【源氏81 第六帖 末摘花1】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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【源氏物語 83 第六帖 末摘花3】帝は源氏が真面目すぎて困ると仰る。庭に出たら、源氏を変装してまで 尾行してきた頭中将に遭遇。

源氏物語 83 第六帖 末摘花3】

〈古文〉

主上の、まめにおはしますと、

 もてなやみきこえさせたまふこそ、

 をかしう思うたまへらるる折々はべれ。

 かやうの御やつれ姿を、いかでかは御覧じつけむ」

と聞こゆれば、たち返り、うち笑ひて、

 

「異人の言はむやうに、咎なあらはされそ。

 これをあだあだしきふるまひと言はば、

 女のありさま苦しからむ」

とのたまへば、

「あまり色めいたりと思して、折々かうのたまふを、恥づかし」

と思ひて、ものも言はず。

 

寝殿の方に、人のけはひ聞くやうもやと思して、

やをら立ち退きたまふ。

透垣のただすこし折れ残りたる隠れの方に、

立ち寄りたまふに、もとより立てる男ありけり。

 

「誰れならむ。心かけたる好き者ありけり」

と思して、蔭につきて立ち隠れたまへば、頭中将なりけり。

 

この夕つ方、内裏よりもろともにまかでたまひける、

やがて大殿にも寄らず、二条院にもあらで、

引き別れたまひけるを、いづちならむと、ただならで、

我も行く方あれど、後につきてうかがひけり。

 

あやしき馬に、狩衣姿のないがしろにて来ければ、

え知りたまはぬに、

さすがに、かう異方に入りたまひぬれば、

心も得ず思ひけるほどに、

ものの音に聞きついて立てるに、

帰りや出でたまふと、下待つなりけり。

 

君は、誰ともえ見分きたまはで、

我と知られじと、抜き足に歩みたまふに、

ふと寄りて、

 

「ふり捨てさせたまへるつらさに、

 御送り仕うまつりつるは。

 もろともに大内山は出でつれど

 入る方見せぬいさよひの月

と恨むるもねたけれど、

この君と見たまふ、

すこしをかしうなりぬ。

 

「人の思ひよらぬことよ」と憎む憎む、

 「里わかぬ かげをば見れど ゆく月の

 いるさの山を 誰れか尋ぬる」

 「かう慕ひありかば、いかにせさせたまはむ」

と聞こえたまふ。

 

「まことは、かやうの御歩きには、

 随身からこそはかばかしきこともあるべけれ。

 後らさせたまはでこそあらめ。

 やつれたる御歩きは、軽々しき事も出で来なむ」

と、おし返しいさめたてまつる。

 

かうのみ見つけらるるを、ねたしと思せど、

かの撫子はえ尋ね知らぬを、

重き功に、御心のうちに思し出づ。

 

〈現代文〉

「あまりにまじめ過ぎるからと

 陛下がよく困るようにおっしゃっていらっしゃいますのが、

 私にはおかしくてならないことがおりおりございます。

 こんな浮気なお忍び姿を陛下は御覧になりませんからね」

命婦が言うと、

源氏は二足三足帰って来て、笑いながら言う。

 

「何を言うのだね。品行方正な人間でも言うように。

 これを浮気と言ったら、君の恋愛生活は何なのだ」

多情な女だと源氏が決めていて、

おりおりこんなことを面と向かって言われるのを

命婦は恥ずかしく思って何とも言わなかった。

 

女暮らしの家の座敷の物音を聞きたいように思って

源氏は静かに庭へ出たのである。

大部分は朽ちてしまったあとの少し残った透垣《すいがき》の

からだが隠せるほどの蔭《かげ》へ源氏が寄って行くと、

そこに以前から立っていた男がある。

 

だれであろう女王に恋をする好色男があるのだと思って、

暗いほうへ隠れて立っていた 。

初めから庭にいたのは頭中将《とうのちゅうじょう》なのである。

 

今日も夕方御所を同時に退出しながら、

源氏が左大臣家へも行かず、二条の院へも帰らないで、

妙に途中で別れて行ったのを見た中将が、不審を起こして、

自身のほうにも行く家があったのを行かずに、

源氏のあとについて来たのである。

 

わざと貧弱な馬に乗って狩衣《かりぎぬ》姿をしていた中将に

源氏は気づかなかったのであったが、

こんな思いがけない邸《やしき》へはいったのが

また中将の不審を倍にして、

立ち去ることができなかったころに、

琴を弾く音《ね》がしてきたので、

それに心も惹かれて庭に立ちながら、

一方では源氏の出て来るのを待っていた。

 

源氏はまだだれであるかに気がつかないで、

顔を見られまいとして抜き足をして庭を離れようとする時に

その男が近づいて来て言った。

 

「私をお撒《ま》きになったのが恨めしくて、

こうしてお送りしてきたのですよ。

『もろともに 大内山は出《い》でつれど

 入る方見せ ぬいざよひの月』

さも秘密を見現わしたように得意になって言うのが腹だたしかったが、

源氏は頭中将であったことに安心もされ、

おかしくなりもした。

「そんな失敬なことをする者はあなたのほかにありませんよ」

憎らしがりながらまた言った。

『里分かぬ かげを見れども 行く月の

 いるさの山を 誰《たれ》かたづぬる』

 こんなふうに私が始終あなたについて歩いたら

 お困りになるでしょう あなたはね」

 

「しかし、恋の成功は

 よい随身をつれて行くか行かないかで決まることもあるでしょう。

 これからはごいっしょにおつれください。お一人歩きは危険ですよ」

頭中将はこんなことを言った。

 

頭中将に得意がられていることを源氏は残念にも思ったが、

あの撫子《なでしこ》の女が自身のものになったことを

中将が知らないことだけが内心には誇らしかった。

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【源氏81 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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【源氏82 第六帖 末摘花2】源氏は常陸宮邸を訪問して 命婦に姫の琴が聞きたいと望む。命婦は姫に琴を聞かせてほしいと頼む。源氏は姫との交際を望む。

【古文】

のたまひしもしるく、

十六夜の月をかしきほどにおはしたり。

「いと、かたはらいたきわざかな。

 ものの音澄むべき夜のさまにもはべらざめるに」

と聞こゆれど、

「なほ、あなたにわたりて、

 ただ一声も、もよほしきこえよ。

 むなしくて帰らむが、ねたかるべきを」

とのたまへば、

うちとけたる住み処に据ゑたてまつりて、

うしろめたうかたじけなしと思へど、

寝殿に参りたれば、まだ格子もさながら、

梅の香をかしきを見出だしてものしたまふ。

よき折かな、と思ひて、

 

「御琴の音、いかにまさりはべらむと、

 思ひたまへらるる夜のけしきに、

 誘はれはべりてなむ。

 心あわたたしき出で入りに、

 えうけたまはらぬこそ口惜しけれ」

と言へば、

「聞き知る人こそあなれ。

 百敷に行き交ふ人の聞くばかりやは」

とて、召し寄するも、あいなう、

いかが聞きたまはむと、

胸つぶる。

 

ほのかに掻き鳴らしたまふ、をかしう聞こゆ。

何ばかり深き手ならねど、

ものの音がらの筋ことなるものなれば、

聞きにくくも思されず。

「いといたう荒れわたりて寂しき所に、

 さばかりの人の、古めかしう、ところせく、

 かしづき据ゑたりけむ名残なく、

 いかに思ほし残すことなからむ。

 かやうの所にこそは、

 昔物語にもあはれなることどもありけれ」

など思ひ続けても、ものや言ひ寄らまし、

と思せど、うちつけにや思さむと、

心恥づかしくて、やすらひたまふ。

命婦、かどある者にて、

いたう耳ならさせたてまつらじ、

と思ひければ、

 

「曇りがちにはべるめり。

 客人の来むとはべりつる、いとひ顔にもこそ。

いま心のどかにを。御格子参りなむ」

とて、

いたうもそそのかさで帰りたれば、

 

「なかなかなるほどにても止みぬるかな。

 もの聞き分くほどにもあらで、ねたう」

とのたまふけしき、をかしと思したり。

 

「同じくは、け近きほどの立ち聞きせさせよ」

 とのたまへど、

「心にくくて」

と思へば、

「いでや、いとかすかなるありさまに思ひ消えて、

 心苦しげにものしたまふめるを、

 うしろめたきさまにや」

 と言へば、

 

「げに、さもあること。

 にはかに我も人もうちとけて語らふべき人の際は、

 際とこそあれ」

など、あはれに思さるる人の御ほどなれば、

 「なほ、さやうのけしきをほのめかせ」

と、語らひたまふ。

また契りたまへる方やあらむ、

いと忍びて帰りたまふ。

 

【現代文】

源氏は言っていたように十六夜いざよい》の月の

《おぼ》に霞《かす》んだ夜に命婦を訪問した。

「困ります。こうした天気は決して音楽に適しませんのですもの」

「まあいいから御殿へ行って、

 ただ一声でいいからお弾《ひ》かせしてくれ。

 聞かれないで帰るのではあまりつまらないから」

と強《し》いて望まれて、

この貴公子を取り散らした自身の部屋へ置いて行くことを

済まなく思いながら、

命婦寝殿《しんでん》へ行ってみると、

まだ格子《こうし》をおろさないで

梅の花のにおう庭を女王はながめていた。

よいところであると命婦は心で思った。

 

「琴の声が聞かせていただけましたらと

 思うような夜分でございますから、

 部屋を出てまいりました。

 私はこちらへ寄せていただいていましても、

 いつも時間が少なくて、

 伺わせていただく間のないのが残念でなりません」

と言うと、

「あなたのような批評家がいては手が出せない。

 御所に出ている人などに聞いてもらえる芸なものですか」

こう言いながらも、

すぐに女王が琴を持って来させるのを見ると、

命婦がかえってはっとした。

源氏の聞いていることを思うからである。

 

女王はほのかな爪音《つまおと》を立てて行った。

源氏はおもしろく聞いていた。

たいした深い芸ではないが、

琴の音というものは他の楽器の持たない異国風な声であったから、

聞きにくくは思わなかった。

この邸《やしき》は非常に荒れているが、

こんな寂しい所に女王の身分を持っていて、

大事がられた時代の名残《なごり》もないような生活をするのでは、

どんなに味気ないことが多かろう。

昔の小説にもこんな背景の前によく佳人が現われてくるものだなどと

源氏は思って今から交渉の端緒を作ろうかとも考えたが、

ぶしつけに思われることが恥ずかしくて座を立ちかねていた。

命婦は才気のある女であったから、

名手の域に遠い人の音楽を長く源氏に聞かせておくことは

女王の損になると思った。

 

「雲が出て月が見えないがちの晩でございますわね。

 今夜私のほうへ訪問してくださるお約束の方がございましたから、

 私がおりませんとわざと避けたようにも当たりますから、

 またゆるりと聞かせていただきます。

 お格子をおろして行きましょう」

命婦は琴を長く弾《ひ》かせないで部屋へ帰った。

 

「あれだけでは聞かせてもらいがいもない。

 どの程度の名手なのかわからなくてつまらない」

源氏は女王に好感を持つらしく見えた。

 

「できるなら近いお座敷のほうへ案内して行ってくれて、

 よそながらでも女王さんの

 衣摺《きぬず》れの音のようなものを 聞かせてくれないか」

と言った。

命婦は近づかせないでよりよい想像をさせておきたかった。

 

「それはだめでございますよ。

 お気の毒なお暮らしをして、

 めいりこんでいらっしゃる方に

 男の方を御紹介することなどはできません」

命婦の言うのが道理であるように源氏も思った。

男女が思いがけなく会合して

語り合うというような階級にははいらない、

ともかくも貴女なんであるからと思ったのである。

 

「しかし、将来は交際ができるように私の話をしておいてくれ」

こう命婦に頼んでから、

源氏はまた今夜をほかに約束した人があるのか帰って行こうとした。

 

【源氏 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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