2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧
源氏 「静まりぬなり。 入りて、さらば、たばかれ」 とのたまふ。 この子も、 いもうとの御心はたわむところなくまめだちたれば、 言ひあはせむ方なくて、 人少なならむ折に入れたてまつらむと思ふなりけり。 源氏 「紀伊守の妹もこなたにあるか。 我にかい…
母屋の中柱に側める人やわが心かくると、 まづ目とどめたまへば、濃き綾の単衣襲なめり。 何にかあらむ上に着て、頭つき細やかに小さき人の、 ものげなき姿ぞしたる。 顔などは、差し向かひたらむ人などにも、 わざと見ゆまじうもてなしたり。 手つき痩せ痩…
寝られたまはぬままには、 源氏 「我は、かく人に憎まれてもならはぬを、 今宵なむ、 初めて憂しと世を思ひ知りぬれば、恥づかしくて、 ながらふまじうこそ、思ひなりぬれ」 などのたまへば、 涙をさへこぼして臥したり。 いとらうたしと思す。 手さぐりの、…
源氏 「昨日待ち暮らししを。 なほあひ思ふまじきなめり」 と怨じたまへば、 顔うち赤めてゐたり。 源氏 「いづら」 とのたまふに、しかしかと申すに、 源氏 「言ふかひなのことや。 あさまし」 とて、またも賜へり。 源氏 「あこは知らじな。 その伊予の翁…