2023-10-26から1日間の記事一覧
左馬頭 「今は、ただ、品にもよらじ。 容貌をばさらにも言はじ。 いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは、 ただひとへにものまめやかに、 静かなる心のおもむきならむよるべをぞ、 つひの頼み所には思ひおくべかりける。 あまりのゆゑよし心ばせうち添…
頭中将 「別人の言はむやうに、心得ず仰せらる」と、中将憎む。 左馬頭 「元の品、時世のおぼえうち合ひ、 やむごとなきあたりの内々のもてなしけはひ後れたらむは、 さらにも言はず、何をしてかく生ひ出でけむと、 言ふかひなくおぼゆべし。 うち合ひてすぐ…
「そこにこそ多く集へたまふらめ。 すこし見ばや。 さてなむ、この厨子も心よく開くべき」 とのたまへば、 〔頭中将〕 「御覧じ所あらむこそ、難くはべらめ」 など聞こえたまふついでに、 「女の、これはしもと難つくまじきは、難くもあるかなと、 やうやう…
光る源氏、名のみことことしう、 言ひ消たれたまふ咎多かなるに、 いとど、かかる好きごとどもを、 末の世にも聞き伝へて、軽びたる名をや流さむと、 忍びたまひける隠ろへごとをさへ、 語り伝へけむ人のもの言ひさがなさよ。 さるは、いといたく世を憚り、 …
その夜、大臣の御里に源氏の君まかでさせたまふ。 作法世にめづらしきまで、もてかしづききこえたまへり。 いときびはにておはしたるを、 ゆゆしううつくしと思ひきこえたまへり。 女君はすこし過ぐしたまへるほどに、 いと若うおはすれば、似げなく恥づかし…