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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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ニンニク注意🧄🚨【源氏物語 21 第2帖 箒木10】風病重きに堪へかねて、極熱の草薬を服して、いと臭きによりなむ、え対面賜はらぬ🧄

頭中将

「式部がところにぞ、けしきあることはあらむ。

 すこしづつ語り申せ」

 と責めらる。

式部丞

「下が下の中には、なでふことか、聞こし召しどころはべらむ」

と言へど、

頭の君、まめやかに「遅し」と責めたまへば、

何事をとり申さむと思ひめぐらすに、

式部丞

まだ文章生にはべりし時、かしこき女の例をなむ見たまへし。

 かの、馬頭の申したまへるやうに、

 公事をも言ひあはせ、

 私ざまの世に住まふべき心おきてを思ひめぐらさむ方もいたり深く、

 才の際なまなまの博士恥づかしく、

 すべて口あかすべくなむはべらざりし。

 それは、ある博士のもとに学問などしはべるとて、

 まかり通ひしほどに、

 主人のむすめども多かりと聞きたまへて、

 はかなきついでに言ひ寄りてはべりしを、

 親聞きつけて、盃持て出でて、

『わが両つの途歌ふを聴け』となむ、

 聞こえごちはべりしかど、

 をさをさうちとけてもまからず、

 かの親の心を憚りて、

 さすがにかかづらひはべりしほどに、

 いとあはれに思ひ後見、寝覚の語らひにも、

 身の才つき、朝廷に仕うまつるべき道々しきことを教へて、

 いときよげに消息文にも仮名といふもの書きまぜず、

 むべむべしく言ひまはしはべるに、

 おのづからえまかり絶えで、その者を師としてなむ、 

 わづかなる腰折文作ることなど習ひはべりしかば、

 今にその恩は忘れはべらねど、

 なつかしき妻子とうち頼まむには、

 無才の人、なま悪ろならむ振る舞ひなど見えむに、

 恥づかしくなむ見えはべりし。

 まいて君達の御ため、

 はかばかしくしたたかなる御後見は、

 何にかせさせたまはむ。

 はかなし、口惜し、とかつ見つつも、

 ただわが心につき、宿世の引く方はべるめれば、

 男しもなむ、仔細なきものははべめる」

 

と申せば、残りを言はせむとて、

「さてさてをかしかりける女かな」とすかいたまふを、

心は得ながら、鼻のわたりをこづきて語りなす。

式部丞

「さて、いと久しくまからざりしに、

 もののたよりに立ち寄りてはべれば、

 常のうちとけゐたる方にははべらで、

 心やましき物越しにてなむ逢ひてはべる。

 ふすぶるにやと、をこがましくも、

 また、よきふしなりとも思ひたまふるに、

 このさかし人はた、軽々しきもの怨じすべきにもあらず、

 世の道理を思ひとりて恨みざりけり。

 声もはやりかにて言ふやう、

『月ごろ、風病重きに堪へかねて、極熱の草薬🧄を服して、

 いと臭きによりなむ、え対面賜はらぬ。

 目のあたりならずとも、さるべからむ雑事らは承らむ』

と、いとあはれにむべむべしく言ひはべり。

 答へに何とかは。

 ただ、『承りぬ』とて、立ち出ではべるに、

 さうざうしくやおぼえけむ、

『この香🧄失せなむ時に立ち寄りたまへ』と高やかに言ふを、

聞き過ぐさむもいとほし、しばしやすらふべきに、

はたはべらねば、げにそのにほひさへ、

はなやかにたち添へるも術なくて、

逃げ目をつかひて、

『ささがにの ふるまひしるき 夕暮れに

 ひるま過ぐせと いふがあやなさ

 いかなることつけぞや』

と、言ひも果てず走り出ではべりぬるに、追ひて、

『逢ふことの 夜をし隔てぬ 仲ならば

 ひる間も何か まばゆからまし』

さすがに口疾くなどははべりき」

と、しづしづと申せば、

君達あさましと思ひて、「嘘言」とて笑ひたまふ。

頭中将

「いづこのさる女かあるべき。

 おいらかに鬼とこそ向かひゐたらめ。

 むくつけきこと」

と爪弾きをして、

「言はむ方なし」と、

式部をあはめ憎みて、

「すこしよろしからむことを申せ」

と責めたまへど、

式部丞

「これよりめづらしきことはさぶらひなむや」とて、をり

左馬頭

「すべて男も女も悪ろ者は、

 わづかに知れる方のことを残りなく見せ尽くさむと思へるこそ、

 いとほしけれ。

 

「式部の所にはおもしろい話があるだろう、少しずつでも聞きたいものだね」

 と中将が言い出した。

「私どもは下の下の階級なんですよ。

 おもしろくお思いになるようなことがどうしてございますものですか」

 式部丞《しきぶのじょう》は話をことわっていたが、

 頭中将《とうのちゅうじょう》が本気になって、早く早くと話を責めるので、

 

「どんな話をいたしましてよろしいか考えましたが、こんなことがございます。

 まだ文章生《もんじょうせい》時代のことですが、

 私はある賢女の良人《おっと》になりました。

 さっきの左馬頭《さまのかみ》のお話のように、

 役所の仕事の相談相手にもなりますし、

 私の処世の方法なんかについても役だつことを教えていてくれました。

 学問などはちょっとした博士《はかせ》などは恥ずかしいほどのもので、

 私なんかは学問のことなどでは、

 前で口がきけるものじゃありませんでした。

 それはある博士の家へ弟子になって通っておりました時分に、

 先生に娘がおおぜいあることを聞いていたものですから、

 ちょっとした機会をとらえて接近してしまったのです。

 親の博士が二人の関係を知るとすぐに杯を持ち出して

 白楽天の結婚の詩などを歌ってくれましたが、

 実は私はあまり気が進みませんでした。

 ただ先生への遠慮でその関係はつながっておりました。

 先方では私をたいへんに愛して、

 よく世話をしまして、 夜分|寝《やす》んでいる時にも、

 私に学問のつくような話をしたり、

 官吏としての心得方などを言ってくれたりいたすのです。

 手紙は皆きれいな字の漢文です。

 仮名なんか一字だって混じっておりません。

 よい文章などをよこされるものですから

 別れかねて通っていたのでございます。

 今でも師匠の恩というようなものをその女に感じますが、

 そんな細君を持つのは、学問の浅い人間や、

 まちがいだらけの生活をしている者には

 たまらないことだとその当時思っておりました。

 またお二方のようなえらい貴公子方には

 そんなずうずうしい先生細君なんかの必要はございません。

 私どもにしましても、そんなのとは反対に歯がゆいような女でも、

 気に入っておればそれでいいのですし、

 前生の縁というものもありますから、

 男から言えばあるがままの女でいいのでございます」  

これで式部丞《しきぶのじょう》が口をつぐもうとしたのを見て、

頭中将は今の話の続きをさせようとして、

「とてもおもしろい女じゃないか」 と言うと、

その気持ちがわかっていながら式部丞は、

自身をばかにしたふうで話す。

 

「そういたしまして、

 その女の所へずっと長く参らないでいました時分に、

 その近辺に用のございましたついでに、寄って見ますと、

 平生の居間の中へは入れないのです。

 物越しに席を作ってすわらせます。

 嫌味を言おうと思っているのか、ばかばかしい、

 そんなことでもすれば別れるのにいい機会がとらえられるというものだと

 私は思っていましたが、賢女ですもの、

 軽々しく嫉妬《しっと》などをするものではありません。

 人情にもよく通じていて恨んだりなんかもしやしません。

 しかも高い声で言うのです。

『月来《げつらい》、風病《ふうびょう》重きに堪えかね

 極熱《ごくねつ》の草薬を服しました。

 それで私はくさいのでようお目にかかりません。

 物越しででも何か御用があれば承りましょう』

ってもっともらしいのです。

 

ばかばかしくて返辞ができるものですか、

私はただ

 『承知いたしました』

と言って帰ろうとしました。

でも物足らず思ったのですか

『このにおいのなくなるころ、お立ち寄りください』

また大きな声で言いますから、

返辞をしないで来るのは気の毒ですが、

ぐずぐずもしていられません。

 

なぜかというと草薬の蒜🧄《ひる》なるものの臭気がいっぱいなんですから、

私は逃げて出る方角を考えながら、

ささがにの 振舞《ふるま》ひしるき

 夕暮れに ひるま過ぐせと 言ふがあやなき

 何の口実なんだか』

と言うか言わないうちに走って来ますと、

あとから人を追いかけさせて返歌をくれました。

『逢ふことの 夜をし隔てぬ 中ならば

 ひるまも何か 眩《まば》ゆからまし』

 というのです。

 歌などは早くできる女なんでございます」

式部丞の話はしずしずと終わった。

貴公子たちはあきれて、

「うそだろう」

と爪弾《つまはじ》きをして見せて、式部をいじめた。

「もう少しよい話をしたまえ」

「これ以上珍しい話があるものですか」

式部丞は退《さが》って行った。

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