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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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つれない空蝉🪷代わりに弟をそばに置く源氏【源氏物語 28 第2帖 箒木17】かの、ありし中納言の子は、得させてむや。らうたげに見えしを。

このほどは大殿にのみおはします。

なほいとかき絶えて、

思ふらむことのいとほしく御心にかかりて、

苦しく思しわびて、

紀伊守を召したり。

源氏

「かの、ありし中納言の子は、得させてむや。

 らうたげに見えしを。

 身近く使ふ人にせむ。

 主上にも我奉らむ」

 とのたまへば、

紀伊

「いとかしこき仰せ言にはべるなり。

 姉なる人にのたまひみむ」

と申すも、

胸つぶれて思せど、

源氏

「その姉君は、朝臣の弟や持たる」

紀伊

「さもはべらず。

 この二年ばかりぞ、

 かくてものしはべれど、

 親のおきてに違へりと思ひ嘆きて、

 心ゆかぬやうになむ、

 聞きたまふる」

源氏

「あはれのことや。

 よろしく聞こえし人ぞかし。

 まことによしや」

とのたまへば、

紀伊

「けしうははべらざるべし。

 もて離れてうとうとしくはべれば、

 世のたとひにて、睦びはべらず」

と申す。

 

さて、五六日ありて、

この子率て参れり。

こまやかにをかしとはなけれど、

なまめきたるさまして、

あて人と見えたり。

召し入れて、

いとなつかしく語らひたまふ。

童心地に、いとめでたくうれしと思ふ。

いもうとの君のことも詳しく問ひたまふ。

さるべきことは答へ聞こえなどして、

恥づかしげにしづまりたれば、

うち出でにくし。

されど、いとよく言ひ知らせたまふ。

 

かかることこそはと、

ほの心得るも、

思ひの外なれど、

幼な心地に深くしもたどらず。

御文を持て来たれば、

女、あさましきに涙も出で来ぬ。

この子の思ふらむこともはしたなくて、

さすがに、御文を面隠しに広げたり。

いと多くて、

源氏

「見し夢を 逢ふ夜ありやと 嘆くまに

 目さへあはでぞ ころも経にける

寝る夜なければ

 

など、目も及ばぬ御書きざまも、

霧り塞がりて、

心得ぬ宿世うち添へりける身を思ひ続けて臥したまへり

 

またの日、

小君召したれば、参るとて御返り乞ふ。

空蝉

「かかる御文見るべき人もなし、と聞こえよ」

とのたまへば、うち笑みて

小君

「違ふべくものたまはざりしものを。

 いかが、さは申さむ」

と言ふに、

心やましく、

残りなくのたまはせ、

知らせてけると思ふに、

つらきこと限りなし。

空蝉

「いで、およすけたることは言はぬぞよき。

 さは、な参りたまひそ」

とむつかられて、

小君

「召すには、いかでか」

とて、参りぬ。

紀伊守、

好き心にこの継母のありさまをあたらしきものに思ひて、

追従しありけば、この子をもてかしづきて、

率てありく。

君、召し寄せて‥

 

このごろはずっと左大臣家に源氏はいた。

あれきり何とも言ってやらないことは、

女の身にとってどんなに苦しいことだろうと

中川の女のことがあわれまれて、

始終心にかかって苦しいはてに源氏は紀伊守を招いた。

 

「自分の手もとへ、この間見た中納言の子供をよこしてくれないか。

 かわいい子だったからそばで使おうと思う。

 御所へ出すことも私からしてやろう」

と言うのであった。

「結構なことでございます。あの子の姉に相談してみましょう」

 その人が思わず引き合いに出されたことだけででも源氏の胸は鳴った。

「その姉さんは君の弟を生んでいるの」

「そうでもございません。

 この二年ほど前から父の妻になっていますが、

 死んだ父親が望んでいたことでないような結婚をしたと思うのでしょう。

 不満らしいということでございます」

「かわいそうだね、評判の娘だったが、ほんとうに美しいのか」

「さあ、悪くもないのでございましょう。

 年のいった息子と若い継母は 親しくせぬものだと申しますから、

 私はその習慣に従っておりまして何も詳しいことは存じません」

紀伊守《きいのかみ》は答えていた。

 

紀伊守は五、六日してからその子供をつれて来た。

整った顔というのではないが、

艶《えん》な風采《ふうさい》を備えていて、

貴族の子らしいところがあった。

そばへ呼んで源氏は打ち解けて話してやった。

子供心に 美しい源氏の君の恩顧を受けうる人になれたことを喜んでいた。

姉のことも詳しく源氏は聞いた。

 

返辞のできることだけは返辞をして、

つつしみ深くしている子供に、

源氏は秘密を打ちあけにくかった。

けれども上手に嘘まじりに話して聞かせると、

そんなことがあったのかと、

子供心におぼろげにわかればわかるほど意外であったが、

子供は深い穿鑿《せんさく》をしようともしない。

 

源氏の手紙を弟が持って来た。

女はあきれて涙さえもこぼれてきた。

弟がどんな想像をするだろうと苦しんだが、

さすがに手紙は読むつもりらしくて、

きまりの悪いのを隠すように顔の上でひろげた。

さっきからからだは横にしていたのである。

手紙は長かった。

 

終わりに、

『見し夢を 逢《あ》ふ夜ありやと 歎《なげ》く間に

 目さへあはでぞ頃《ころ》も経にける』

安眠のできる夜がないのですから、夢が見られないわけです。

とあった。

 

目もくらむほどの美しい字で書かれてある。

涙で目が曇って、しまいには何も読めなくなって、

苦しい思いの新しく加えられた運命を思い続けた。

 

翌日源氏の所から小君《こぎみ》が召された 。

出かける時に小君は姉に返事をくれと言った。

「ああしたお手紙をいただくはずの人がありませんと申し上げればいい」

と姉が言った。

「まちがわないように言っていらっしったのにそんなお返辞はできない」

そう言うのから推せば 秘密はすっかり弟に打ち明けられたものらしい、

こう思うと女は源氏が恨めしくてならない。

 

「そんなことを言うものじゃない。

 大人の言うようなことを子供が言ってはいけない

 お断わりができなければお邸《やしき》へ行かなければいい」

 無理なことを言われて、

弟は、

「呼びにおよこしになったのですもの、伺わないでは」

と言って、そのまま行った。

好色な紀伊守はこの継母が父の妻であることを惜しがって、

取り入りたい心から小君にも優しくしてつれて歩きもするのだった。

小君が来たというので源氏は居間へ呼んだ。

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