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女君に会えなくなる悲しさに泣く源氏【源氏物語 27 第2帖 箒木16】冷淡な女への恨みと、 会えなくなることに 胸を痛めて 泣く源氏。人妻である女君の煩悶を思いやる

鶏も鳴きぬ。

人びと起き出でて、

「いといぎたなかりける夜かな」

供人

「御車ひき出でよ」

など言ふなり。

 守も出で来て、

紀伊

「女などの御方違へこそ。

 夜深く急がせたまふべきかは」

など言ふもあり。

 

君は、

またかやうのついであらむこともいとかたく、

さしはへてはいかでか、

御文なども通はむことのいとわりなきを思すに、

いと胸いたし。

奥の中将も出でて、

いと苦しがれば、許したまひても、

また引きとどめたまひつつ、

源氏

「いかでか、聞こゆべき。

 世に知らぬ御心のつらさも、

 あはれも、浅からぬ世の思ひ出では、

 さまざまめづらかなるべき例かな」

とて、

うち泣きたまふ気色、

いとなまめきたり。

鶏もしばしば鳴くに、

心あわたたしくて、

源氏

「つれなきを 恨みも果てぬ しののめに

 とりあへぬまで おどろかすらむ」

女、身のありさまを思ふに、

いとつきなくまばゆき心地して、

めでたき御もてなしも、

何ともおぼえず、

常はいとすくすくしく心づきなしと

思ひあなづる伊予の方の思ひやられて、

「夢にや見ゆらむ」

と、そら恐ろしくつつまし。

空蝉

「身の憂さを 嘆くにあかで 明くる夜は

 とり重ねてぞ 音もなかれける」

ことと明くなれば、

障子口まで送りたまふ。

内も外も人騒がしければ、引き立てて、

別れたまふほど、

心細く、隔つる関と見えたり

 

御直衣など着たまひて、

南の高欄にしばしうち眺めたまふ。

西面の格子そそき上げて、

人びと覗くべかめる。

簀子の中のほどに立てたる小障子の上より

仄かに見えたまへる御ありさまを、

身にしむばかり思へる好き心どもあめり。

 

月は有明にて、

光をさまれるものから、

かげけざやかに見えて、

なかなかをかしき曙なり。

何心なき空のけしきも、

ただ見る人から、

艶にもすごくも見ゆるなりけり。

人知れぬ御心には、いと胸いたく、

言伝てやらむよすがだになきをと、

かへりみがちにて出でたまひぬ。

 

月は有明にて、

光をさまれるものから、

かげけざやかに見えて、

なかなかをかしき曙なり。

 

何心なき空のけしきも、

ただ見る人から、

艶にもすごくも見ゆるなりけり。

人知れぬ御心には、いと胸いたく、

言伝てやらむよすがだになきをと、

かへりみがちにて出でたまひぬ。

 

殿に帰りたまひても、

とみにもまどろまれたまはず。

またあひ見るべき方なきを、

まして、かの人の思ふらむ心の中、

いかならむと、

心苦しく思ひやりたまふ。

「すぐれたることはなけれど、

 めやすくもてつけてもありつる中の品かな。

 隈なく見集めたる人の言ひしことは、げに」

と思し合はせられけり。

 

《とり》の声がしてきた。家従たちも起きて、

「寝坊をしたものだ。早くお車の用意をせい」

そんな命令も下していた。

 

「女の家へ方違えにおいでになった場合とは違いますよ。

 早くお帰りになる必要は少しもないじゃありませんか」

と言っているのは紀伊であった。

 

源氏は もうまたこんな機会が作り出せそうでないことと、

今後どうして文通をすればよいか,

どうもそれが不可能らしいことで胸を痛くしていた。

女を行かせようとしてもまた引き留める源氏であった。

「どうしてあなたと通信をしたらいいでしょう。

 あくまで冷淡なあなたへの恨みも、

 恋も、一通りでない私が、

 今夜のことだけを

 いつまでも泣いて思っていなければならないのですか」

泣いている源氏が非常に艶《えん》に見えた。

 

何度も鶏《とり》が鳴いた。

『つれなさを 恨みもはてぬ しののめに

 とりあへぬまで 驚かすらん』  

あわただしい心持ちで源氏はこうささやいた。

 

女は己を省みると、

不似合いという晴がましさを感ぜずにいられない源氏から

どんなに熱情的に思われても、

これをうれしいこととすることができないのである。

 

それに自分としては

愛情の持てない夫のいる

伊予の国が思われて、

こんな夢を見てはいないだろうかと

考えると恐ろしかった。

『身の憂《う》さを 歎《なげ》くにあかで 明くる夜は

 とり重ねても 音《ね》ぞ泣かれける』

と言った。

 

ずんずん明るくなってゆく。

女は襖子《からかみ》の所へまで送って行った。

奥のほうの人も、

こちらの縁のほうの人も起き出して来たんでざわついた。

襖子をしめてもとの席へ帰って行く源氏は、

一重の襖子が越えがたい隔ての関のように思われた。

 

直衣などを着て、

姿を整えた源氏が

縁側の高欄《こうらん》によりかかっているのが、

隣室の縁低い衝立《ついたて》の

上のほうから見えるのをのぞいて、

源氏の美の放つ光が身の中へしみ通るように

思っている女房もあった。

 

残月のあるころで

落ち着いた空の明かりが物をさわやかに照らしていた。

変わったおもしろい夏の曙《あけぼの》である。

だれも知らぬ物思いを、心に抱いた源氏であるから、

主観的にひどく身にしむ夜明けの風景だと思った。

言《こと》づて一つする便宜がないではないかと思って

顧みがちに去った。

 

家へ帰ってからも

源氏はすぐに眠ることができなかった。

再会の至難である悲しみだけを自分はしているが、

自由な男でない人妻のあの人は

このほかにも

いろいろな煩悶《はんもん》があるはずであると

思いやっていた。

すぐれた女ではないが、

感じのよさを十分に備えた中の品だ。

だから多くの経験を持った男の言うことには

敬服される点があると、

品定めの夜の話を思い出していた。

 

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