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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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残された軒端荻と源氏【源氏物語 33 第3帖 空蝉4 】この人の、なま心なく、若やかなるけはひもあはれなれば、さすがに情け情けしく契りおかせたまふ。

 この人の、なま心なく、

 若やかなるけはひもあはれなれば、

 さすがに情け情けしく契りおかせたまふ。

源氏

「人知りたることよりも、

 かやうなるは、あはれも添ふこととなむ、

 昔人も言ひける。

 あひ思ひたまへよ。

 つつむことなきにしもあらねば、

 身ながら心にもえまかすまじくなむありける。

 また、さるべき人びとも許されじかしと、

 かねて胸いたくなむ。

 忘れで待ちたまへよ」

 など、なほなほしく語らひたまふ。

 

軒端荻

「人の思ひはべらむことの恥づかしきになむ、

 え聞こえさすまじき」

 とうらもなく言ふ。

源氏

「なべて、人に知らせばこそあらめ、 

 この小さき上人に伝へて聞こえむ。

 気色なくもてなしたまへ」

 など言ひおきて、

 かの脱ぎすべしたると見ゆる薄衣を取りて出でたまひぬ

 

 小君近う臥したるを起こしたまへば、

 うしろめたう思ひつつ寝ければ、

 ふとおどろきぬ。

 戸をやをら押し開くるに、

 老いたる御達の声にて

老女

「あれは誰そ」

 とおどろおどろしく問ふ。

 わづらはしくて、

小君

「まろぞ」と答ふ。

老女

「夜中に、こは、なぞ外歩かせたまふ」

とさかしがりて、

外ざまへ来。

いと憎くて、

小君

「あらず。ここもとへ出づるぞ」

 とて、

 君を押し出でたてまつるに、

 暁近き月、隈なくさし出でて、

 ふと人の影見えければ、

老女

「またおはするは、誰そ」

 と問ふ。

老女

「民部のおもとなめり。

 けしうはあらぬおもとの丈だちかな」

 と言ふ。

 

 丈高き人の常に笑はるるを言ふなりけり。

 老人、これを連ねて歩きけると思ひて、

老女

「今、ただ今立ちならびたまひなむ」

 と言ふ言ふ、

 我もこの戸より出でて来。

 わびしければ、えはた押し返さで、

 渡殿の口にかい添ひて隠れ立ちたまへれば、

 このおもとさし寄りて、

老女

「おもとは、今宵は、上にやさぶらひたまひつる。

 一昨日より腹を病みて、いとわりなければ、

 下にはべりつるを、

 人少ななりとて召ししかば、昨夜参う上りしかど、

 なほえ堪ふまじくなむ」

 と、憂ふ。

 答へも聞かで、

老女

「あな、腹々。今聞こえむ」

 とて過ぎぬるに、からうして出でたまふ。

 なほかかる歩きは軽々しくあやしかりけりと、

 いよいよ思し懲りぬべし。

 

しかし何の疑いも持たない新しい情人も

可憐《かれん》に思われる点があって、

源氏は言葉上手にのちのちの約束をしたりしていた。

「公然の関係よりもこうした忍んだ中のほうが

 恋を深くするものだと昔から皆言ってます。

 あなたも私を愛してくださいよ。

 私は世間への遠慮がないでもないのだから、

 思ったとおりの行為はできないのです

 あなたの側でも父や兄が

 この関係に好意を持ってくれそうなことを

 私は今から心配している。

 忘れずにまた逢いに来る私を待っていてください」

などと、

安っぽい浮気男の口ぶりでものを言っていた。

 

「人にこの秘密を知らせたくありませんから、

 私は手紙もようあげません」

女は素直に言っていた。

「皆に怪しがられるようにしてはいけないが、

 この家の小さい殿上人ね、

 あれに託して私も手紙をあげよう。

 気をつけなくてはいけませんよ、

 秘密をだれにも知らせないように」

と言い置いて、

源氏は恋人が さっき脱いで行ったらしい

一枚の薄衣《うすもの》を手に持って出た。

 

隣の室に寝ていた小君《こぎみ》を起こすと、

源氏のことを気がかりに思いながら寝ていたので、

すぐに目をさました。

小君が妻戸を静かにあけると、年の寄った女の声で、

「だれですか」

おおげさに言った。

めんどうだと思いながら小君は、

「私だ」と言う。

 

「こんな夜中にどこへおいでになるんですか」  

小賢しい老女がこちらへ歩いて来るふうである。

小君は憎らしく思って、

「ちょっと外へ出るだけだよ」

と言いながら源氏を戸口から押し出した。

夜明けに近い時刻の明るい月光が外にあって、

ふと人影を老女は見た。

「もう一人の方はどなた」

と言った老女が、また、

「民部《みんぶ》さんでしょう。

 すばらしく背の高い人だね」

と言う。

 

朋輩《ほうばい》の背高女のことをいうのであろう。

老女は小君と民部がいっしょに行くのだと思っていた。

「今にあなたも負けない背丈《せたけ》になりますよ」  

と言いながら源氏たちの出た妻戸から老女も外へ出て来た。

困りながらも老女を戸口へ押し返すこともできずに、

向かい側の渡殿《わたどの》の入り口に添って立っていると、

源氏のそばへ老女が寄って来た。

「あんた、今夜はお居間に行っていたの。

 私はお腹の具合が悪くて

 部屋のほうで休んでいたのですがね。

 不用心だから来いと言って呼び出されたもんですよ。

 どうも苦しくて我慢ができませんよ」

こぼして聞かせるのである。

「痛い、ああ痛い。またあとで」

と言って行ってしまった。

やっと源氏はそこを離れることができた。

冒険はできないと源氏は懲りた。

 

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