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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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縁なくば 海に身投げせよと育てられた姫【源氏物語 58 第5帖 若紫2 】源氏は 明石の変わり者の入道の娘の話を聞く。

君は、

行ひしたまひつつ、日たくるままに、

いかならむと思したるを、

「とかう紛らはさせたまひて、

 思し入れぬなむ、よくはべる」

と聞こゆれば、後への山に立ち出でて、

京の方を見たまふ。

はるかに霞みわたりて、

四方の梢そこはかとなう煙りわたれるほど、

 

「絵にいとよくも似たるかな。

 かかる所に住む人、

 心に思ひ残すことはあらじかし」

とのたまへば、

 

「これは、いと浅くはべり。

 人の国などにはべる海、

 山のありさまなどを御覧ぜさせてはべらば、

 いかに、御絵いみじうまさらせたまはむ。

 富士の山、なにがしの嶽」

など、語りきこゆるもあり。

 

また西国のおもしろき浦々、

磯の上を言ひ続くるもありて、

よろづに紛らはしきこゆ。

 

「近き所には、播磨の明石の浦こそ、

 なほことにはべれ。

 何の至り深き隈はなけれど、

 ただ、海の面を見わたしたるほどなむ、

 あやしく異所に似ず、

 ゆほびかなる所にはべる。

 かの国の前の守、新発意の、女かしづきたる家、

 いといたしかし。

 大臣の後にて、出で立ちもすべかりける人の、

 世のひがものにて、交じらひもせず、

 近衛の中将を捨てて、

 申し賜はれりける司なれど、

 かの国の人にもすこしあなづられて、

 『何の面目にてか、また都にも帰らむ』と言ひて、

 頭も下ろしはべりにけるを、

 すこし奥まりたる山住みもせで、

 さる海づらに出でゐたる、

 ひがひがしきやうなれど、

 げに、かの国のうちに、

 さも、人の籠もりゐぬべき所々はありながら、

 深き里は、人離れ心すごく、

 若き妻子の思ひわびぬべきにより、

 かつは心をやれる住まひになむはべる。

 先つころ、まかり下りてはべりしついでに、

 ありさま見たまへに寄りてはべりしかば、

 京にてこそ所得ぬやうなりけれ、

 そこらはるかに、

 いかめしう占めて造れるさま、

 さは言へど、

 国の司にてし置きけることなれば、

 残りの齢ゆたかに経べき心構へも、

 二なくしたりけり。

 後の世の勤めも、いとよくして、

 なかなか法師まさりしたる人になむはべりける」

と申せば、

 

「さて、その女は」

と、問ひたまふ。

「けしうはあらず、容貌、心ばせなどはべるなり。

 代々の国の司など、用意ことにして、

 さる心ばへ見すなれど、さらにうけひかず。

 『我が身のかくいたづらに沈めるだにあるを、

 この人ひとりにこそあれ、思ふさまことなり。

 もし我に後れてその志とげず、

 この思ひおきつる宿世違はば、海に入りね』と、

 常に遺言しおきてはべるなる」

と聞こゆれば、君もをかしと聞きたまふ。

 

人びと、

 「海龍王の后になるべきいつき女ななり」

 「心高さ苦しや」

とて笑ふ。

 

かく言ふは、播磨守の子の、

蔵人より、

今年、かうぶり得たるなりけり。

「いと好きたる者なれば、

 かの入道の遺言破りつべき心はあらむかし」

「さて、たたずみ寄るならむ」

と言ひあへり。

 

源氏は寺へ帰って仏前の勤めをしながら昼になると

もう発作が起こるころであるがと不安だった。

「気をお紛《まぎ》らしになって、

 病気のことをお思いにならないのが

 いちばんよろしゅうございますよ」

などと人が言うので、

後ろのほうの山へ出て今度は京のほうをながめた。

ずっと遠くまで霞《かす》んでいて、

山の近い木立ちなどは淡く煙って見えた。

 

「絵によく似ている。

 こんな所に住めば人間の穢《きたな》い感情などは

 起こしようがないだろう」

と源氏が言うと、

「この山などはまだ浅いものでございます。

 地方の海岸の風景や山の景色をお目にかけましたら、

 その自然からお得《え》になるところがあって、

 絵がずいぶん御上達なさいますでしょうと思います。

 富士、それから何々山」

こんな話をする者があった。

 

また西のほうの国々のすぐれた風景を言って、

浦々の名をたくさん並べ立てる者もあったりして、

だれも皆病への関心から源氏を放そうと努めているのである。

 

「近い所では播磨《はりま》の明石《あかし》の浦が

 よろしゅうございます。

 特別に変わったよさはありませんが、

 ただそこから海のほうをながめた景色は

 どこよりもよく纏《まとま》っております。

 前《さきの》播磨守入道が大事な娘を住ませてある家は

 たいしたものでございます。

 二代ほど前は大臣だった家筋で、

 もっと出世すべきはずの人なんですが、

 変わり者で仲間の交際なんかをもきらって

 近衛の中将を捨てて

 自分から願って出てなった播磨守なんですが、

 国の者に反抗されたりして、

 こんな不名誉なことになっては京へ帰れないと言って、

 その時に入道した人ですが、

 坊様になったのなら坊様らしく

 深い山のほうへでも行って住めばよさそうなものですが、

 名所の明石の浦などに邸宅を構えております。

 播磨にはずいぶん坊様に似合った山なんかが多いのですがね、

 変わり者をてらってそうするかというとそれにも訳はあるのです。

 若い妻子が寂しがるだろうという思いやりなのです。

 そんな意味でずいぶん贅沢に

 住居《すまい》なども作ってございます。

 先日父の所へまいりました節、

 どんなふうにしているかも見たいので寄ってみました。

 京にいますうちは不遇なようでしたが

 今の住居などはすばらしいもので、

 何といっても地方長官をしていますうちに

 財産ができていたのですから、

 生涯の生活に事を欠かない準備は十分にしておいて、

 そして一方では仏弟子《ぶつでし》として感心に

 修行も積んでいるようです。

 あの人だけは入道してから真価が現われた人のように見受けます」

 

「その娘というのはどんな娘」

「まず無難な人らしゅうございます。

 あのあとの代々の長官が特に敬意を表して求婚するのですが、

 入道は決して承知いたしません。 

 自分の一生は不遇だったのだから、

 娘の未来だけはこうありたいという理想を持っている。

 自分が死んで実現が困難になり、

 自分の希望しない結婚でもしなければならなくなった時には、

 海へ身を投げてしまえと遺言をしているそうです」

 源氏はこの話の播磨の海べの変わり者の入道の娘が おもしろく思えた。

 

「竜宮《りゅうぐう》の王様のお后《きさき》になるんだね。

 自尊心の強いったらないね。困り者だ」

などと冷評する者があって人々は笑っていた。

 

話をした良清《よしきよ》は現在の播磨守の息子で、

さきには六位の蔵人をしていたが、

位が一階上がって役から離れた男である。

ほかの者は、

「好色な男なのだから、

 その入道の遺言を破りうる自信を持っているのだろう。

 それでよく訪問に行ったりするのだよ」

とも言っていた。

 

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