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方違えの日の恋【源氏物語 24 第2帖 箒木13】方違えで紀伊守の屋敷に滞在の源氏 入内の話もあった衛門督の姫が 紀伊守の継母になっていると知る

女房

「いといたうまめだちて。

 まだきに、やむごとなきよすが定まりたまへるこそ、

 さうざうしかめれ」

女房

「されど、さるべき隈には、よくこそ、隠れ歩きたまふなれ」

など言ふにも、

思すことのみ心にかかりたまへば、まづ胸つぶれて、

「かやうのついでにも、人の言ひ漏らさむを、

 聞きつけたらむ時」

などおぼえたまふ。

ことなることなければ、聞きさしたまひつ。

 

式部卿宮の姫君朝顔奉りたまひし歌などを、

すこしほほゆがめて語るも聞こゆ。

「くつろぎがましく、歌誦じがちにもあるかな、

 なほ見劣りはしなむかし」

と思す。

 

出で来て、

灯籠掛け添へ、灯明くかかげなどして、

御くだものばかり参れり

源氏

「とばり帳も、いかにぞは。

 さる方の心もとなくては、

 めざましき饗応ならむ」

とのたまへば、

紀伊

「何よけむとも、えうけたまはらず」

と、かしこまりてさぶらふ。

端つ方の御座に、

仮なるやうにて大殿籠もれば、

人びとも静まりぬ。

 

主人の子ども、をかしげにてあり。

童なる、殿上のほどに御覧じ馴れたるもあり。

伊予介の子もあり。

あまたある中に、

いとけはひあてはかにて、十二、三ばかりなるもあり。

源氏

いづれか、いづれ

など問ひたまふに、

紀伊

「これは、故衛門督の末の子にて、

 いとかなしくしはべりけるを、

 幼きほどに後れはべりて、

 姉なる人のよすがに、かくてはべるなり。

 才などもつきはべりぬべく、

 けしうははべらぬを、

 殿上なども思ひたまへかけながら、

 すがすがしうはえ交じらひはべらざめる」

と申す。

源氏

「あはれのことや。

 この姉君や、まうとの後の親」

紀伊

「さなむはべる」と申すに

源氏

「似げなき親をも、まうけたりけるかな。

 主上にも聞こし召しおきて、

 『宮仕へに出だし立てむと漏らし奏せし、いかになりにけむ』

 と、いつぞやのたまはせし。

 世こそ定めなきものなれ」

と、いとおよすけのたまふ。

紀伊

「不意に、かくてものしはべるなり。

 世の中といふもの、さのみこそ、

 今も昔も、定まりたることはべらね。

 中についても、

 女の宿世は浮かびたるなむ、あはれにはべる」

など聞こえさす。

源氏

「伊予介は、かしづくや。

 君と思ふらむな」

紀伊

「いかがは。

 私の主とこそは思ひてはべるめるを、

 好き好きしきことと、なにがしよりはじめて、

 うけひきはべらずなむ」

と申す。

源氏

「さりとも、

 まうとたちのつきづきしく今めきたらむに、

 おろしたてむやは。

 かの介は、いとよしありて気色ばめるをや」

など、物語したまひて、

源氏

「いづかたにぞ」

紀伊

「皆、下屋におろしはべりぬるを、えやまかりおりあへざらむ」と聞こゆ。

 

「まじめらしく早く奥様をお持ちになったのですから

 お寂しいわけですわね。

 でもずいぶん隠れてお通いになる所があるんですって」

こんな言葉にも源氏ははっとした。

自分の作っているあるまじい恋を人が知って、

こうした場合に何とか言われていたらどうだろうと思ったのである。

でも話はただ事ばかりであったから

皆を聞こうとするほどの興味が起こらなかった。

 

式部卿《しきぶきょう》の宮の姫君朝顔を贈った時の歌などを、

だれかが得意そうに語ってもいた。

行儀がなくて、

会話の中に節をつけて歌を入れたがる人たちだ、

中の品がおもしろいといっても

自分には我慢のできぬこともあるだろうと源氏は思った。

 

紀伊守が出て来て、灯籠《とうろう》の数をふやさせたり、

座敷の灯《ひ》を明るくしたりしてから、

主人には遠慮をして菓子だけを献じた。

「わが家はとばり帳《ちょう》をも掛けたればって歌ね、

 大君来ませ婿にせんってね、

 そこへ気がつかないでは主人の手落ちかもしれない」

「通人でない主人でございまして、どうも」

紀伊守は縁側でかしこまっていた。

 

源氏は縁に近い寝床で 、仮臥《かりね》のように横になっていた。

随行者たちももう寝たようである。

紀伊守は愛らしい子供を幾人も持っていた。

御所の侍童を勤めて源氏の知った顔もある。

縁側などを往来《ゆきき》する中には伊予守の子もあった。

何人かの中に特別に上品な十二、三の子もある。

どれが子で、どれが弟かなどと源氏は尋ねていた。

 

「ただ今通りました子は、

 亡《な》くなりました衛門督《えもんのかみ》の 末の息子で、

 かわいがられていたのですが、小さいうちに父親に別れまして、

 姉の縁でこうして私の家にいるのでございます。

 将来のためにもなりますから、

 御所の侍童《さむらいわらわ》を勤めさせたいようですが、

 それも姉の手だけでははかばかしく運ばないのでございましょう」  

紀伊守が説明した。

 

「あの子の姉さんが君の継母なんだね」

「そうでございます」

「似つかわしくないお母さんを持ったものだね。

 その人のことは陛下もお聞きになっていらっしって、

 宮仕えに出したいと衛門督が申していたが、

 その娘はどうなったのだろうって、

 いつかお言葉があった。

 人生はだれがどうなるかわからないものだね」  

老成者らしい口ぶりである。

 

「不意にそうなったのでございます。

 まあ人というものは昔も今も

 意外なふうにも変わってゆくものですが、

 その中でも女の運命ほどはかないものはございません」

などと紀伊守は言っていた。

 

「伊予介は大事にするだろう。主君のように思うだろうな」

「さあ。まあ私生活の主君でございますかな。

 好色すぎると私はじめ兄弟はにがにがしがっております」

「だって君などのような当世男に伊予介は譲ってくれないだろう。

 あれはなかなか年は寄っても

 りっぱな風采《ふうさい》を持っているのだからね」

 などと話しながら、

「その人どちらにいるの」

「皆|下屋《しもや》のほうへやってしまったのですが、

間にあいませんで一部分だけは残っているかもしれません」

紀伊守は言った。

 

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