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源氏、人妻が気になる😓【源氏物語 25 第2帖 箒木14】君は、とけても寝られたまはず、いたづら臥しと思さるるに御目覚めて、この北の障子のあなたに人のけはひするを‥

酔ひすすみて、

皆人びと簀子に臥しつつ、静まりぬ。

君は、とけても寝られたまはず、

いたづら臥しと思さるるに御目覚めて、

この北の障子のあなたに人のけはひするを、

「こなたや、かくいふ人の隠れたる方ならむ、

 あはれや」

と御心とどめて、

やをら起きて立ち聞きたまへば、

ありつる子の声にて、

小君

「ものけたまはる。

 いづくにおはしますぞ」

と、かれたる声のをかしきにて言へば、

空蝉

「ここにぞ臥したる。

 客人は寝たまひぬるか。

 いかに近からむと思ひつるを、

 されど、け遠かりけり」

と言ふ。

寝たりける声のしどけなき、

いとよく似通ひたれば、

いもうとと聞きたまひつ。

小君

「廂にぞ大殿籠もりぬる。

 音に聞きつる御ありさまを見たてまつりつる、

 げにこそめでたかりけれ」

と、みそかに言ふ。

空蝉

「昼ならましかば、覗きて見たてまつりてまし」

とねぶたげに言ひて、

顔ひき入れつる声す。

「ねたう、心とどめても問ひ聞けかし」

とあぢきなく思す。

小君

「まろは端に寝はべらむ。

 あなくるし」

とて、灯かかげなどすべし。

女君は、

ただこの障子口筋交ひたるほどにぞ臥したるべき。

空蝉

「中将の君はいづくにぞ。

 人げ遠き心地して、もの恐ろし」

と言ふなれば、

長押の下に、人びと臥して答へすなり。

女房

「下に湯におりて。

 『ただ今参らむ』とはべる」

と言ふ。

 

皆静まりたるけはひなれば、

掛金を試みに引きあけたまへれば、

あなたよりは鎖さざりけり。

几帳を障子口には立てて、

灯はほの暗きに、

見たまへば唐櫃だつ物どもを置きたれば、

乱りがはしき中を、

分け入りたまへれば、

ただ一人いとささやかにて臥したり。

なまわづらはしけれど、

上なる衣押しやるまで、

求めつる人と思へり。

源氏

「中将召しつればなむ。

 人知れぬ思ひの、しるしある心地して」

とのたまふを、

ともかくも思ひ分かれず、

物に襲はるる心地して、

「や」とおびゆれど、

顔に衣のさはりて、音にも立てず。

源氏

「うちつけに、

 深からぬ心のほどと見たまふらむ、

 ことわりなれど、

 年ごろ思ひわたる心のうちも、

 聞こえ知らせむとてなむ。

 かかるをりを待ち出でたるも、

 さらに浅くはあらじと、思ひなしたまへ」

と、いとやはらかにのたまひて、

鬼神も荒だつまじきけはひなれば、

はしたなく、

「ここに、人」とも、

えののしらず。

心地はた、わびしく、

あるまじきことと思へば、あさましく、

空蝉

「人違へにこそはべるめれ」

と言ふも息の下なり。

消えまどへる気色、

いと心苦しくらうたげなれば、

をかしと見たまひて‥

 

深く酔った家従たちは、

皆夏の夜を 板敷で仮寝してしまったのであるが、

源氏は眠れない、

一人臥《ね》をしていると思うと目がさめがちであった。

この室の北側の襖子《からかみ》の向こうに

人のいるらしい音のする所は

紀伊守の話した女のそっとしている室であろうと源氏は思った。

かわいそうな女だとその時から思っていたのであったから、

静かに起きて行って襖子越しに物声を聞き出そうとした。

その弟の声で、

「ちょいと、どこにいらっしゃるの」

と言う。

少し涸《か》れたきれいな声である。

「私はここで寝《やす》んでいるの。

 お客様はお寝みになったの。

 ここと近くてどんなに困るかと思っていたけれど、

 まあ安心した」

と、寝床から言う声もよく似ているので

姉弟であることがわかった。

 

「廂《ひさし》の室でお寝みになりましたよ。

 評判のお顔を見ましたよ。

 ほんとうにお美しい方だった」

一段声を低くして言っている。

 

「昼だったら私ものぞくのだけれど」

 睡《ね》むそうに言って、

その顔は蒲団《ふとん》の中へ引き入れたらしい。

もう少し熱心に聞けばよいのにと源氏は物足りない。

「私は縁の近くのほうへ行って寝ます。暗いなあ」

子供は燈心を掻《か》き立てたりするものらしかった。

女は襖子の所からすぐ斜《すじか》いにあたる辺で寝ているらしい。

 

中将はどこへ行ったの。

 今夜は人がそばにいてくれないと

 何だか心細い気がする」

 低い下の室のほうから、女房が、

「あの人ちょうどお湯にはいりに参りまして、

 すぐ参ると申しました」

 と言っていた。

 

源氏はその女房たちも皆寝静まったころに、

掛鉄《かけがね》をはずして引いてみると襖子はさっとあいた。

向こう側には掛鉄がなかったわけである。

そのきわに几帳《きちょう》が立ててあった。

ほのかな灯《ひ》の明りで

衣服箱などがごたごたと置かれてあるのが見える。

源氏はその中を分けるようにして歩いて行った。

 

小さな形で女が一人寝ていた。

やましく思いながら顔を掩《おお》うた着物を

源氏が手で引きのけるまで女は、

さっき呼んだ女房の中将が来たのだと思っていた。

「あなたが中将を呼んでいらっしゃったから、

 私の思いが通じたのだと思って」

 と源氏の宰相中将《さいしょうのちゅうじょう》は言いかけたが、

女は恐ろしがって、

夢に襲われているようなふうである。

 

「や」と言うつもりがあるが、

顔に夜着がさわって声にはならなかった。

「出来心のようにあなたは思うでしょう。

 もっともだけれど、

 私はそうじゃないのですよ。

 ずっと前からあなたを思っていたのです。

 それを聞いていただきたいのでこんな機会を待っていたのです。

 だからすべて皆 前生《ぜんしょう》の縁が

 導くのだと思ってください」

柔らかい調子である。

 

神様だって

この人には寛大であらねばならぬだろうと思われる美しさで

近づいているのであるから、

露骨に、

「知らぬ人がこんな所へ」

ともののしることができない。

しかも女は情けなくてならないのである。

 

「人まちがえでいらっしゃるのでしょう」

やっと、息よりも低い声で言った。

当惑しきった様子が柔らかい感じであり、

可憐《かれん》でもあった。

 

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