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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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方違えの夜🪷【源氏物語 23 第2帖 箒木 12】源氏 、方違えで紀伊守の家に🏡 雨夜の品定めの 中の品 の家の女人 紀伊守の妹に興味を持つ

暗くなるほどに、

女房

「今宵、中神、内裏よりは塞がりてはべりけり」

と聞こゆ。

源氏

「さかし、例は忌みたまふ方なりけり。

 二条の院にも同じ筋にて、いづくにか違へむ。

 いと悩ましきに」

とて大殿籠もれり。

 「いと悪しきことなり」

と、これかれ聞こゆ。

 

紀伊守にて親しく仕うまつる人の、 

 中川のわたりなる家なむ、このころ水せき入れて、

 涼しき蔭にはべる」

と聞こゆ。

源氏

「いとよかなり。

 悩ましきに、牛ながら引き入れつべからむ所を」

とのたまふ。

 

忍び忍びの御方違へ所は、あまたありぬべけれど、

久しくほど経て渡りたまへるに、

方塞げて、ひき違へ他ざまへと思さむは、

いとほしきなるべし。

 

紀伊守に仰せ言賜へば、承りながら、退きて、

紀伊

「伊予守の朝臣の家に慎むことはべりて、

 女房なむまかり移れるころにて、

 狭き所にはべれば、

 なめげなることやはべらむ」

と、下に嘆くを聞きたまひて、

源氏

「その人近からむなむ、うれしかるべき。

 女遠き旅寝は、もの恐ろしき心地すべきを。

 ただその几帳のうしろに」

とのたまへば、

「げに、よろしき御座所にも」

とて、人走らせやる。

 

いと忍びて、

ことさらにことことしからぬ所をと、

急ぎ出でたまへば、

大臣にも聞こえたまはず、

御供にも睦ましき限りしておはしましぬ。

「にはかに」

とわぶれど、人も聞き入れず。

寝殿の東面払ひあけさせて、

かりそめの御しつらひしたり。

水の心ばへなど、

さる方にをかしくしなしたり。

田舎家だつ柴垣して、

前栽など心とめて植ゑたり。

風涼しくて、そこはかとなき虫の声々聞こえ、

蛍しげく飛びまがひて、

をかしきほどなり。

 

人びと、

渡殿より出でたる泉にのぞきゐて、酒呑む。

主人も肴求むと、こゆるぎのいそぎありくほど、

君はのどやかに眺めたまひて、

かの、中の品に取り出でて言ひし、

この並ならむかしと思し出づ。

 

思ひ上がれる気色に聞きおきたまへる女なれば、

ゆかしくて耳とどめたまへるに、

この西面にぞ人のけはひする。

衣の音なひはらはらとして、

若き声どもにくからず。

さすがに忍びて、笑ひなどするけはひ、

ことさらびたり。

 

格子を上げたりけれど、

守、「心なし」

とむつかりて下しつれば、

火灯したる透影、障子の上より漏りたるに、

やをら寄りたまひて、

「見ゆや」

と思せど、隙もなければ、

しばし聞きたまふに、

この近き母屋に集ひゐたるなるべし、

うちささめき言ふことどもを聞きたまへば、

わが御上なるべし。

 

暗くなってきたころに、

「今夜は中神のお通り路《みち》になっておりまして、

 御所からすぐにここへ来て

 お寝《やす》みになってはよろしくございません」  

という、源氏の家従たちのしらせがあった。

 

「そう、いつも中神は避けることになっているのだ。

 しかし二条の院も同じ方角だから、

 どこへ行ってよいかわからない。

 私はもう疲れていて寝てしまいたいのに」  

そして源氏は寝室にはいった。

「このままになすってはよろしくございません」

 また家従が言って来る。

 

 

 紀伊《きいのかみ》で、

 家従の一人である男の家のことが上申される。

中川辺でございますがこのごろ新築いたしまして、

 水などを庭へ引き込んでございまして、

 そこならばお涼しかろうと思います」

「それは非常によい。からだが大儀だから、

 車のままではいれる所にしたい」

と源氏は言っていた。

 

隠れた恋人の家は幾つもあるはずであるが、

久しぶりに帰ってきて、

方角除《よ》けにほかの女の所へ行っては

夫人に済まぬと思っているらしい。

 

呼び出して泊まりに行くことを紀伊守に言うと、

承知はして行ったが、同輩のいる所へ行って、

父の伊予守——伊予は太守の国で、

 官名は介《すけ》になっているが事実上の長官であるーの家のほうに

 このごろ障《さわ》りがありまして、

 家族たちが私の家へ移って来ているのです。

 もとから狭い家なんですから失礼がないかと心配です」

と迷惑げに言ったことがまた源氏の耳にはいると、

「そんなふうに人がたくさんいる家がうれしいのだよ、

 女の人の居所が遠いような所は夜がこわいよ。

 伊予守の家族のいる部屋の几帳《きちょう》の後ろでいいのだからね」

 冗談混じりにまたこう言わせたものである。

「よいお泊まり所になればよろしいが」

と言って、紀伊守は召使を家へ走らせた。

 

源氏は微行《しのび》で移りたかったので、

まもなく出かけるのに大臣へも告げず、

親しい家従だけをつれて行った。

 

あまりに急だと言って紀伊守がこぼすのを

他の家従たちは耳に入れないで、

寝殿《しんでん》の東向きの座敷を掃除《そうじ》させて

主人へ提供させ、

そこに宿泊の仕度《したく》ができた。

 

庭に通した水の流れなどが地方官級の家としては

凝《こ》ってできた住宅である。

わざと田舎の家らしい柴垣《しばがき》が作ってあったりして、

庭の植え込みなどもよくできていた。

涼しい風が吹いて、

どこでともなく虫が鳴き、

《ほたる》がたくさん飛んでいた。

 

源氏の従者たちは渡殿《わたどの》の下をくぐって出て来る

水の流れに臨んで酒を飲んでいた。

紀伊守が主人をよりよく待遇するために奔走している時、

一人でいた源氏は、家の中をながめて、

前夜の人たちが

階級を三つに分けたその中《ちゅう》の品の列にはいる家であろうと思い、

その話を思い出していた。

 

思い上がった娘だという評判の伊予守の娘、

すなわち紀伊守の妹であったから、

源氏は初めからそれに興味を持っていて、

どの辺の座敷にいるのであろうと物音に耳を立てていると、

この座敷の西に続いた部屋で女の衣摺《きぬず》れが聞こえ、

若々しい、媚《なま》めかしい声で、

しかもさすがに声をひそめてものを言ったりしているのに気がついた。

わざとらしいが悪い感じもしなかった。

 

初めその前の縁の格子《こうし》が上げたままになっていたのを、

不用意だといって紀伊守がしかって、

今は皆戸がおろされてしまったので、

その室の灯影《ほかげ》が、

襖子《からかみ》の隙間から赤くこちらへさしていた。

源氏は静かにそこへ寄って行って中が見えるかと思ったが、

それほどの隙間はない。

しばらく立って聞いていると、

それは襖子の向こうの中央の間に集まってしているらしい低いさざめきは、

源氏自身が話題にされているらしい。

 

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