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源氏物語&古典文学を聴く🪷〜少納言チャンネル&古文🌿

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頭中将の見舞いを受ける【源氏物語 48 第4帖 夕顔14】夕顔の亡骸は美しく思われた。二条院についた源氏はひどく具合が悪くなる。頭中将に会い見舞いを受ける

この人をえ抱きたまふまじければ、

上蓆におしくくみて、

惟光乗せたてまつる。

いとささやかにて、疎ましげもなく、

らうたげなり。

したたかにしもえせねば、

髪はこぼれ出でたるも、

目くれ惑ひて、あさましう悲し、

と思せば、

なり果てむさまを見むと思せど、

「はや、御馬にて、二条院へおはしまさむ。

 人騒がしくなりはべらぬほどに」

とて、

右近を添へて乗すれば、

徒歩より、君に馬はたてまつりて、

くくり引き上げなどして、

かつは、いとあやしく、

おぼえぬ送りなれど、

御気色のいみじきを見たてまつれば、

身を捨てて行くに、

君は物もおぼえたまはず、

我かのさまにて、

おはし着きたり。

 

人びと、

「いづこより、おはしますにか。

 なやましげに見えさせたまふ」

など言へど、

御帳の内に入りたまひて、

胸をおさへて思ふに、いといみじければ、

「などて、乗り添ひて行かざりつらむ。

 生き返りたらむ時、いかなる心地せむ。

 見捨てて行きあかれにけりと、

 つらくや思はむ」

と、心惑ひのなかにも、

思ほすに、御胸せきあぐる心地したまふ。

御頭も痛く、身も熱き心地して、

いと苦しく、惑はれたまへば、

「かくはかなくて、我もいたづらになりぬるなめり」

と思す。

日高くなれど、

起き上がりたまはねば、

人びとあやしがりて、

御粥などそそのかしきこゆれど、

苦しくて、

いと心細く思さるるに、

内裏より御使あり。

昨日、え尋ね出でたてまつらざりしより、

おぼつかながらせたまふ。

 

大殿の君達参りたまへど、

頭中将ばかりを、

「立ちながら、こなたに入りたまへ」

とのたまひて、

御簾の内ながらのたまふ。

 

「乳母にてはべる者の、

   この五月のころほひより、

 重くわづらひはべりしが、

 頭剃り忌むこと受けなどして、

 そのしるしにや、よみがへりたりしを、

 このごろ、またおこりて、

 弱くなむなりにたる、

『今一度、とぶらひ見よ』と申したりしかば、

 いときなきよりなづさひし者の、

 今はのきざみに、つらしとや思はむ、

 と思うたまへてまかれりしに、

 その家なりける下人の、病しけるが、

 にはかに出であへで亡くなりにけるを、

 怖ぢ憚りて、

 日を暮らしてなむ取り出ではべりけるを、

 聞きつけはべりしかば、

 神事なるころ、いと不便なること、

 と思うたまへかしこまりて、

 え参らぬなり。

 この暁より、しはぶき病みにやはべらむ、

 頭いと痛くて苦しくはべれば、

 いと無礼にて聞こゆること」

などのたまふ。

 

中将、

「さらば、さるよしをこそ奏しはべらめ。

 昨夜も、御遊びに、

 かしこく求めたてまつらせたまひて、

 御気色悪しくはべりき」

と聞こえたまひて、立ち返り、

「いかなる行き触れにかからせたまふぞや。

 述べやらせたまふことこそ、

 まことと思うたまへられね」

 と言ふに、胸つぶれたまひて‥

 

源氏自身が

遺骸《いがい》を車へ載せることは無理らしかったから、

ござ に巻いて惟光《これみつ》が車へ載せた。

小柄な人の死骸からは

悪感は受けないできわめて美しいものに思われた。

残酷に思われるような扱い方を遠慮して、

確かにも巻かなんだから、

茣蓙ござの横から髪が少しこぼれていた。

 

それを見た源氏は

目がくらむような悲しみを覚えて煙になる最後までも

自分がついていたいという気になったのであるが、

「あなた様はさっそく二条の院へお帰りなさいませ。

 世間の者が起き出しませんうちに」  

と惟光は言って、

遺骸には右近を添えて乗せた。

自身の馬を源氏に提供して、

自身は徒歩で、

袴《はかま》のくくりを上げたりして出かけたのであった。

ずいぶん迷惑な役のようにも思われたが、

悲しんでいる源氏を見ては、

自分のことなどはどうでもよいという気に惟光はなったのである。

源氏は無我夢中で二条の院へ着いた。

 

女房たちが、

「どちらからのお帰りなんでしょう。

 御気分がお悪いようですよ」

などと言っているのを知っていたが、

そのまま寝室へはいって、

そして胸をおさえて考えてみると自身が今経験していることは

非常な悲しいことであるということがわかった。

なぜ自分はあの車に乗って行かなかったのだろう、

もし蘇生《そせい》することがあったらあの人はどう思うだろう、

見捨てて行ってしまったと恨めしく思わないだろうか、

こんなことを思うと胸がせき上がってくるようで、

頭も痛く、

からだには発熱も感ぜられて苦しい。

こうして自分も死んでしまうのであろうと思われるのである。

八時ごろになっても源氏が起きぬので、

女房たちは心配をしだして、

朝の食事を寝室の主人へ勧めてみたが無駄だった。

源氏は苦しくて、

そして生命の危険が迫ってくるような心細さを覚えていると、

宮中のお使いが来た。

帝は昨日もお召しになった源氏を御覧になれなかったことで

御心配をあそばされるのであった。

 

左大臣家の子息たちも訪問して来たが そのうちの頭中将にだけ、

「お立ちになったままでちょっとこちらへ」

と言わせて、

源氏は招いた友と御簾《みす》を隔てて対した。

 

「私の乳母の、

 この五月ごろから大病をしていました者が、

 尼になったりなどしたものですから、

 その効験《ききめ》でか

 一時快《よ》くなっていましたが、

 またこのごろ悪くなりまして、

 生前にもう一度だけ訪問をしてくれなどと言ってきているので、

 小さい時から世話になった者に、

 最後に恨めしく思わせるのは残酷だと思って、

 訪問しましたところがその家の召使の男が前から病気をしていて、

 私のいるうちに亡くなったのです。

 恐縮して私に隠して夜になってから

 そっと遺骸を外へ運び出したということを

 私は気がついたのです。

 御所では神事に関した御用の多い時期ですから、

 そうした穢れに触れた者は御遠慮すべきであると思って

 謹慎をしているのです。

 それに今朝方からなんだか 風邪にかかったのですか、

 頭痛がして苦しいものですからこんなふうで失礼します」

などと源氏は言うのであった。

 

中将は、

「ではそのように奏上しておきましょう。

 昨夜も音楽のありました時に、

 御自身でお指図をなさいまして

 あちこちとあなたをお捜させになったのですが、

 おいでにならなかったので、

 御機嫌がよろしくありませんでした」

と言って、

帰ろうとしたがまた帰って来て、

「ねえ、どんな穢《けが》れにおあいになったのですか。

 さっきから伺ったのはどうもほんとうとは思われない」

と、頭中将から言われた源氏ははっとした。

 

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