いづれの御時にか、
女御更衣あまたさぶらひたまひける中に、
いとやむごとなき際にはあらぬが、
すぐれて時めきたまふありけり。
はじめより我はと思ひあがりたまへる御方々、
めざましきものにおとしめそねみたまふ。
同じほど、それより下臈の更衣たちは、
ましてやすからず。
朝夕の宮仕につけても、
人の心をのみ動かし、
恨みを負るつもりにやありけん、
いとあつしくなりゆき、
もの心細げに里がちなるを、
いよいよあかずあはれなるものに思ほして、
人のそしりをもえ憚らせたまはず、
世の例にもなりぬべき御もてなしなり。
夜の御殿《おとど》の宿直所《とのいどころ》から退《さが》る朝、
続いてその人ばかりが召される夜、
目に見 耳に聞いて口惜《くちお》しがらせた恨みのせいもあったか
からだが弱くなって、心細くなった更衣は
多く実家へ下がっていがちということになると、
いよいよ帝はこの人にばかり心をお引かれになるという御様子で、
人が何と批評をしようとも
それに御遠慮などというものがおできにならない。
御聖徳を伝える歴史の上にも
暗い影の一所残るようなことにもなりかねない状態になった。
高官たちも殿上役人たちも困って、
御|覚醒《かくせい》になるのを期しながら、
当分は見ぬ顔をしていたいという態度をとるほどの
御|寵愛《ちょうあい》ぶりであった。
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